こだわりの雨具                       高塚哲広

(2009/06/08)


 

雨の季節。
気象の仕事についてから、この時期はとくに「雨具」にこだわるようになった。

愛用傘の出番です.JPG

まず、傘は大きいサイズで柄のしっかりしたものを愛用している。
アナウンサーを辞めた16年前、
天気の仕事をするのだからこれくらいの傘は持っとけよと
当時の職場でプレゼントしてくれた思い出の傘だ。
手入れといっても使ったあとに広げておく程度だが、丈夫で随分長持ちしている。
私は傘のさし方が下手なのか、この大きな愛用傘でも、
いつも靴や靴下、ズボンの下が濡れてしまうことが多い。
梅雨どきに大切なのは、この雨に濡れたときの対策だ。

こんなに大きくても・・・.JPG

東京の6月の最高気温は、20度を下回る日もあれば30度を軽く超える日もあり、
気温の変化が大きい。個人差はあるが、22度を下回る日はとくに注意が必要!
雨に濡れると、あっという間に体温を奪われ体が冷えてしまうのだ。
冷えは体力の急激な消耗へとつながり、体調不良や病気の引き金になる。
とくに足は冷えやすいので、下半身を濡らさないことがポイント。
私はいつも防水スプレーを常用している。これも雨具?
また、着替えの靴下と靴、ズボンをオフィスに置いている。
気温の高いときは、濡れても体のダメージは小さいが、
着替えがあると気分もすっきり快適だ。

ちなみに、たまのアウトドアレジャー用には、
少し値は張ったが、体温の調整がうまくできる通湿性の素材を使ったレインウェアを
車に積んでいる。安価な体を覆うだけのレインコートでも、ないよりはいいが、
使用中の快適さは思った以上に差があるので、ぜひお試しを。

雨を喜ぶのは庭のあじさい.JPG


投稿者 高塚哲広


小さな春の訪れ                       高塚哲広

(2009/01/13)


 

日の落ちるのが、随分遅くなったと思いませんか。
冬至の頃に比べると、20分近ほど日没が遅くなっただけですが、
夕方の風景がまったく違って見えます。

先日夕方5時に西の空を撮った写真です。
夕暮れのオレンジ色の空に漂う黒い雲が見えます。
これはあすの天気を悪くするようなものではありません。
夕暮れ層積雲といって、昼間できた積雲の成れの果てです。
日中できた積雲(綿雲)が、気温が下がり対流が収まってきたためにつぶれてできた雲です。
幻想的な夕暮れの空は、季節がまた春に向かって歩み始めたことを感じさせてくれます。

太陽は少しずつ確実に力強さを増して、風は冷たく真冬の空気でも、
日なたを歩いていると、目を開けていられないほどのまばゆさと降り注ぐ白い光が
妙に新鮮な気分にさせてくれます。

寒いと一日中部屋の中にいたり、
仕事でビルから出られなかったりすることも多いのですが、
こうした光の強まりを感じることは、心や体の健康を保つのに
とてもプラスに作用しているように思います。

先日丸一日降った雨のあと、夜道を歩いていると、
どこからともなく土のにおいがしました。
冬のきりっとした清涼さとは違うそのにおいには、どこかやわらかさが感じられました。
これも厳冬で見つけた小さな春の訪れなのかもしれません。


東京日没の空.png     刻々と変化.png
 【東京日没の空】                   【刻々と変化】


投稿者 高塚哲広


蚊も暑さは大嫌い                      高塚哲広

(2008/06/12)


 

プーンという羽音がどこからともなく聞こえてくる。
目を凝らすと、見つけた。私の腕で、そいつは今まさに血を吸おうとするところであった。
私の血はよほどおいしいのか、子供のころからよく蚊にくわれる。

やられた!.JPG

猛暑の年、神社の茂みなどからヤブ蚊がいっせいに消えたというニュースが話題になった。
あまりの暑さに蚊もダウンしてしまったのだろうか。
調べてみると、蚊の出没と気温には明瞭な関係があった。
蚊の活動が最も活発になる気温ゾーンは意外にも低く、20度から23度くらいなのだ。
これ以上高い気温になると、蚊は仮死状態となり、じっとしたまま動けなくなってしまう。
だから、真夏の太陽の下で蚊に出くわすことはほとんどない。
蚊にくわれるのは、気温が下がる夕方ごろか、竹やぶや茂みの中など
昼間でも気温の低い所が多い。日中35度前後にもなれば、
竹やぶの中ですら高い気温だったのだ。

見つけたぞ.JPG

北海道で9月に行われたプロゴルフのトーナメントで、
蚊が大量に発生してプロたちを悩ませたことがあった。
夏になりきれない6月と、少し涼しくなる9月は、
蚊にとって絶好の活動時期なのである。


投稿者 高塚哲広


海のキラキラはお好き?                  高塚哲広

(2008/03/03)


 

早春は光あふれる世界だ。いまごろの日差しを柔らかいと形容することも多いが、
柔らかく感じさせるのは気温がまだ低いからで、真冬と比べると圧倒的な力強さで、
街の風景を明るく描き出す。

私の友人は、逆光でキラキラ輝く海をこよなく愛し、自分のマンションから見える春の海のすばらしさを
自慢げに話してくれる。ベランダに出て、光に包まれるような感じでボーッとしていると、時のたつのも
忘れ、ストレスがうそのように抜け落ちていくという。なんともうらやましい話だ。

昼と夜の繰り返しの中で暮らしてきた地球の生物に、光は大きな影響を与えている。
人間の場合も、光を浴びなければいけない季節に光の量が足りないと、体調不良を引き起こすことが
多い。これには「季節性感情障害」という立派な病名までついている。
何をするのも億劫だとか、やる気が出ない、昼間でもやたら眠いといった症状に覚えのある人は
要注意だ。紫外線が気になる現代社会で、日光浴という言葉は死語になりつつあるが、
今頃の季節の適度な日光浴は、冬の光不足を補う絶好のチャンスとなる。まだ寒いからと
家の中に閉じこもってないで、積極的に外へ出かけることをおすすめしたい。
私は花粉症がひどいので、天気のいい日はなるべく窓越しに早春の光をいっぱい浴びるようにしている。少しでも「春の気持ちよさ」を味わおうではないか。


     きらめく海.jpg     まばゆい空.jpg


投稿者 高塚哲広


冬のにおい                          高塚哲広

(2007/12/03)


 

電気ごたつを出した。スイッチを入れると、足元にぬくもりが広がるのと同時に、どこかなつかしいこたつ特有のにおいがする。
車のヒーターも同じだ。エンジンが暖まると、車内にヒーター特有のにおいが広がる。石油ストーブの
石油臭さもなつかしい冬の記憶を呼び覚ます。
満員電車の中では、長い間しまってあったセーターやコートのにおいがする。窓から差し込む柔らかい
日差しが、そのにおいをさらに強めているようだ。
枯れ葉を巻き上げる冷たい風には、どこか病院の消毒液のような清潔感を感じさせるにおいがある。鼻を
刺激するこのにおいが、なぜか心地よい。
ひだまりでは、包み込まれるような太陽のにおいがした、暖かい季節には感じなかった太陽の恵みの
においなのかもしれない。街には、冬のにおいがあふれている。


     1枚目JPG.JPG     2枚目.JPG


投稿者 高塚哲広


夏の秋雲                           高塚哲広

(2007/09/25)


 

写真1.jpg今年は厳しい残暑が続き、秋らしさが感じられない。
秋のさわやかさをもたらす大陸育ちの高気圧がなかなか
やってこないからだ。この高気圧の乾いた空気が入ってくる
と、空にも秋らしさを感じる雲が見られるようになる。
巻雲と呼ばれる刷毛で描いたような細い筋状の雲や巻積雲と
呼ばれるうろこ状の雲だ。上空の強い西風であるジェット気流
に伴い現れることが多く、本州付近にジェット気流が南下して
くる秋は、まさに巻雲や巻積雲の季節といえる。
上空5000メートル以上の高い所にできるため、秋の空をより
写真2.jpg高く見せる演出役でもある。

これとは対照的なのが、南の海洋育ちの夏の高気圧に覆われているときの夏の雲である。
もくもくと縦に成長するいわゆる入道雲がその代表選手で、
ふわりと浮かんでいるいわゆる綿雲もこの一種。
今年の9月の空は、まだこの積雲系の雲が多く、空の表情は
まだ夏だ。

写真3.jpgそんな暑い最中に見かけた券雲やその仲間の雲の写真で、
少しでも秋の気配を感じていただければと思う。実は夏でも
大気の状態が不安定なとき、入道雲が発達すると強い上昇
気流が雲の頂から水平方向に流れ出し、巻雲ができるのだ。
また台風の中心付近の上空から吹き出した気流が券雲を作り、台風接近の前触れとして現れることも。

夏に現れた秋雲。暑いけど、少しだけ気分はさわやかだった。


投稿者 高塚哲広


雨ってどんな形?                      高塚哲広

(2007/07/09)


 

幼稚園の子供たちに雨の絵を描いてもらったことがある。
子供の目に、雨はどんな風に映っているのだろうか。
30人の子供たちの中で一番多かったのは、先の尖ったしずく型の雨で、次はただの線に見える
雨だった。
大人に雨の絵を描いてもらっても、ほとんどの人が、子供たちと同じしずく型の雨粒を並べる。
小さいときから、雨のイメージといえば、ずっとしずく型のままなのだ。

ところが、実際の雨粒は、しずく型ではなく、あんパンの形をしている。
もともとまん丸の雨粒は、落ちてくるあいだに空気の抵抗を受けるため、下側がひしゃげてくぼんだような形になるのだ。だから空に水色のあんパンが無数に浮かんでいるような絵が、最も忠実に雨を表現していることになる。今までに、こんな雨の絵を見た人はいないだろう。

では、大粒の雨ってどんな雨だろうか。
夏の夕立は直径1㎝くらいありそうだが、これもまた空気の抵抗で大きな雨粒はすぐに分裂してしまい、せいぜい5㎜程度が限界となる。

梅雨空が続き、こんなに身近な雨なのに、雨に対する誤解は意外に多い。


      IMG_0470.JPG     IMG_0474.JPG


投稿者 高塚哲広


新緑の季節到来!                     高塚哲広

(2007/05/07)


 

生まれたての緑.JPG緑の表情が毎日のように変化して、街を歩くのが楽しい季節になった。
初夏の日差しを浴びて、つややかに輝く新緑は、目に飛び込んでくるだけでも気持ちいいが、独特の緑の香りを撒き散らし、からだの細胞の一つ一つがリフレッシュされるかのようだ。
この特有の香りの正体は「フィトンチッド」と呼ばれる物質で、殺菌や清浄化作用があり、人間や生物に対して、有効に働くようだ。

街路樹や公園の緑だってこんなに香るのだから、野山や森に出かければ、さらに効果がある。
「森林浴」というとおおげさだから、天気のいい休みの日には、近隣の緑を散策してみよう。
どんな癒し系の音楽よりもからだの休まる気がする。

緑の風には、どこかクールな清涼感もあるが、これは、葉からさかんに水分が蒸発することにより、
周囲から熱を奪う蒸散作用のためだ。木々の生い茂った公園や森の中は、実際に気温を測ってみると、周囲より2度から3度も低い。

都心の新緑.JPG先日オープンした話題の東京ミッドタウンは、街を緑で彩り、
周囲には広大な緑のオープンスペースが設けられた。コンクリートで固められた都市部のヒートアイランド現象を少しでも
緩和しようという試みだ。
こうした環境に配慮した都市計画がうまく機能すれば、東京の街中にも涼やかな緑風が吹き抜ける日がくるかもしれない。


投稿者 高塚哲広


2007年春に思うこと                     高塚哲広

(2007/03/12)


 

毎年今頃になると、吹く風がどことなく心地よく感じられる日がある。
家の近くにある常緑樹の葉が、さわさわと擦れあい音を立てる。ところが、今年はそれがない。
気温が高い日が多いために、春になったという実感がほとんどないのだ。これほど季節感に乏しい春は初めての経験である。

先週も、スタッフから「日の出が早くなり朝が明るくなりましたよね」と言われて、そういえばそうだねと
いった具合。春になると、まず昼の時間が少しずつ長くなり、遅れて気温が上がり始める。今年はずっと暖かいから、光の伸びの感じ方も希薄なのだろうか。

2月の休日、水戸の偕楽園に出かけたが、梅の花もいつもより早く二分咲きだった。
途中、高速道沿いにずらりと並んだ杉林は、茶色に染まっていた。梅の花の頃は、花粉症の症状も
序の口のはずが、今年は2月初めから毎日完全防御の日々が続いている。
翌週、東京の湯島天神にも出かけたが、梅の花の香りもマスク越しでパッとしなかった。

    偕楽園の梅.jpg       こちらは湯島天神.jpg
     偕楽園の梅                        湯島天神の梅

中国の暦である二十四節気は、一年を15日ごとの「気」と、さらに5日ごとの「候」に分けた暦である。
つまり、季節感というのは5日ごとに変わるというものだが、毎週土日に天気予報番組を担当している
私にとって、この季節感の捉え方は実に鋭いと思っていた。毎週何かしら一週間前と違う季節感の
発見があったのだが、今年になってからは、それもうつろである。
ソメイヨシノの開花も早まりそうだが、桜と聞いてもときめきが感じられないのは私だけだろうか。


投稿者 高塚哲広


初日の出に思うこと                     高塚哲広

(2007/01/01)


 

初日の出.jpg一年のうちでもっとも日の出の時刻が気になるのは、元日である。今年も初日の出の瞬間に大きな期待を寄せた人も多いことだろう。
ところが、ふだんの生活の中で、日の出や日没を気にしている人はほとんどいない。
冬至を過ぎて、太陽の光は順調に強さを増し、昼の長さも少しずつ長くなっているのだが、そのわずかな変化に気づいている人は、おそらくほとんどいないだろう。

人間は人工的に光を作り出し、夜でも昼とほとんど変わらない生活を手に入れた。地球の夜を
宇宙から写した写真を見たことがあるが、日本は世界の中でももっとも明るく輝き、光の洪水のように
見えた。アフリカの夜も明るく輝いていた。それは森林を焼いている焼き畑農業の光だった。
 
光は、地球上に暮らすさまざまな生物に多大な影響を与えている。
動物たちは、光を浴びる長さがだんだん長くなると、季節が春に向かっていることを知る。
人間のからだの中にもこうしたメカニズムがあり、季節の変化を光のわずかな伸長で感じることが
できるはずだが、人工的な光のはんらんは、人間のこうした季節感を感じる能力を確実に鈍らせて
しまったようだ。

冬晴れのまぶしさ.jpg冬晴れの日、太陽のまぶしさを感じることがある。
このあと1月下旬がもっとも寒いころだが、太陽は少しずつ高さを増し、私たちに春が近いことを
教えているのだ。




投稿者 高塚哲広


食欲の秋                           高塚哲広

(2006/10/23)


 

食欲をそそる雲?.jpgいわし雲を見ると、食欲がわくといった友人がいる。
秋の真っ青な青空も良いが、きょうのように白い雲が規則正しく並ぶ空も、また良い。
祭りの季節を迎え、私の母が栗ご飯を作ってくれた。口の中に広がるほんわかとした栗の甘さは、秋を感じるには十分だ。近所のケーキ屋にも、タイミングを計ったかのように、普段はないマロンのロールケーキが登場した。

実りの秋は、食欲の秋でもあり、いろいろ食べたいものが多くて困ってしまう。この季節に食欲が増すのは、日中の気温が20度前後と、1年のうちで最も快適なことも影響しているが、最大の理由は、「冬に備える」という人間の動物としての本能にあるようだ。今のうちに栄養を十分摂り、本来食物がなくなる冬を乗り切ろうという本能だ。人間も大昔には冬眠していたという説もある。

クマなどの冬眠する動物は今、冬に備えて必死に脂肪をため込んでいる。
私も脂肪をため込んでいる気はないが、このからだの丸みを取るためには、毎日の筋トレが欠かせない季節の到来である。


        秋の夕暮れ 今夜は何食べる?.jpg


投稿者 高塚哲広


夏の記憶

(2006/08/14)


 

夏の記憶といえば、青い空にもくもくとわき立つ入道雲と麦わら帽子だ。
子供のころ、ツバの広い麦わら帽子をいつもかぶっていたのを思い出す。
麦わらのにおいが夏の強い日差しのにおいと混じりあい、郷愁をさそう。そして、何よりも涼しい。
ツバは子供の肩幅より広く、日よけ効果は抜群だった。突然の夕立にも、傘代わりになってくれた。
今は、子供向けのツバの小さなかわいいデザインものは見かけても、大人が使う麦わら帽子は
なかなか見つからない。

機能的で日本の夏にぴったりの麦わらを何とか復活させたいと、いつも屋外で放送していた天気予報
番組で麦わらをかぶってみたことがあった。少し太りかけていた体と童顔の麦わら姿は、妙にはまった
ようで、これがうけた。
ただ、かぶるだけでは芸がないので、最高気温が30度に達した真夏日だけ、かぶることにした。
今から11年前の1995年の東京は記録的な猛暑だった。私が麦わら帽子をかぶったのは、連続37日
にも及んだ。真夏日が途切れた日、麦わらを空に放り投げたのをなつかしく思いだす。

先日、台風7号が近づく前日、東京都内で空の写真を撮った。
入道雲の隣に、上空の薄雲が同居している。台風の中心には、周りから猛烈な勢いで空気が巻き込まれる。集まった高温多湿な空気こそ、台風のエネルギー源なのだが、この高温の空気、台風の一番上から今度は周囲に向かって吐き出されているのをご存知だろうか。東京上空で見えた雲の正体は、この台風から吹き出した風が作った雲なのだ。
今年の東京は、台風の影響だけではなく、もう秋が通ったかのように刷毛で描いたような薄雲の漂う日もあり、生まれて48回目の夏の記憶は、中途半端なものになりそうだ。


       Still0810_00001.jpg     Still0810_00000.jpg




投稿者 高塚哲広


天気と推理小説

(2006/06/05)


 

 推理小説好きの私は、いろいろな作家の作品をなかば乱読ぎみに読みあさっているが、おもしろいのは、殺人事件に天気の描写はつきものということだ。最もよく出てくるのは、雨の描写である。霧雨のように細かい雨から、すぐずぶぬれになるような大粒の雨まで、さまざまな雨が現場には降る。雨の降り方そのものが、事件の本質を物語っているかのようだ。雨は、季節によってもいろいろな表情を見せる。蒸し暑い梅雨に降る雨は、読んでいるだけでも重苦しく、からだにまとわりついてくる。今にも雪に変わりそうな雨は、物語の進行に合わせて、からだも凍りつきそうだ。雨と季節を絡めた巧みな描写を読むとき、作家たちの天気に対する観察力の鋭さには、ただただ感服するのみである。

 今年は梅雨前から雨の日が多かったが、6月のスタートは晴れた所が多かった。その季節感を推理小説家風に書いてみよう。
「天気予報の通り、ようやくからっと晴れた。街路樹の緑が、ずいぶん濃くなって、歩道に濃い影を落としている。脇の草むらも青々と生い茂り、きのうまでの雨が、いつもの景色を一変させたかのようだ。久しぶりに犬の散歩をさせていた少年が、その草むらに、人形のようなものがあると近くの交番に知らせてきたのは、今から2時間ほど前だった。・・・」
お粗末でした。

060605_01.jpg 060605_02.jpg
こんな雨はいやだな・・・ 突然の雷雨の裏側にもドラマがあるかも・・・原宿駅

投稿者 高塚哲広


青空予報

(2006/03/27)


 
 「きれいな青空」と誰もが思う空は、どんな青空なのだろうか。「抜けるような青空」とか「吸い込まれるような青空」という表現もよく使うが、それはどんな色合いなのだろうか。10数年前、この業界に転職して、天気予報で「晴れ」をもっと具体的に伝えることができないかといろいろ考えていたころ、ふと青空の色という素朴な疑問にぶちあたった。

 大きな文具店に出かけて、色付きの工作ペーパーを探してみた。あるわ、あるわ、スカイブルーと思える青色の何と多彩なことか。どの色も、実際見たような気がする。どれも遠い空の記憶とつながっていくようだ。

 微妙な色合いの違いは、太陽の光の散乱によっておこる。空気中の水蒸気や埃が少ないと、太陽の光のうち、青色が強く散乱するため、深い青色の空となる。一方で、水蒸気や埃が多くなると、太陽の光が一様に乱反射し、白っぽい青空ができあがる。

 であれば、あすの青空の色は予報できるのではと考えたのが、「青空予報」だった。当時私が担当していた天気番組で、CGで濃い青から薄い(白い)青まで、4種類の空色を予測し、晴れの天気マークである太陽の代わりに使ってみた。はじめはみんなおもしろがってくれたが、予報では、晴れ=青空という方程式はなかなか浸透せず、単なる試みの段階で終ってしまった。

 いろいろ調べてみると、昔、気象学の黎明期には、空の色を科学する学問もあったようだが、天気予報は晴れるかどうかが重要で、あすの生活そのものに直接影響しないこうした分野の学問は廃れてしまったこともわかった。

 先日、春の嵐が吹き荒れ、東京では台風並の32メートルもの突風が吹いた。その日、強風により埃や水蒸気が一掃された東京の空は、1年に数回見られるかどうかの、深さと透徹な輝きに満ちた青空だった。
 
 春の天気は変わりやすく、空気中の水蒸気や埃などの量は、ダイナミックに変化する。青空の色の変化の割合も大きい。そんな春の空を見上げながら、ときには空の色を楽しむゆとりも必要なのだと、青空予報のことを思い出した。

【模範的なスカイブルー】 【春らしく白っぽい青空】

投稿者 高塚哲広


2006年冬に思う

(2006/01/16)


 
 いつもと違う冬と実感している人は多いと思う。私もこの12月の寒さには参った。あまりの寒さに足が冷えていつまでも眠りにつけない夜もあった。こんな経験は初めてだ。カゼがなかなか治らない。「カゼを三回ひくと春になる」という言葉もあるが、ノドと鼻の違和感が消えない日々が延々と続き、このまま花粉症に突入なんてことになりはしないかと、恐れおののく。家でも暖房なしでは、とてもつらい。電気代がいつもの月の2倍で、驚いた。

 明けて2006年の正月。外は寒く、外出もせず過ごす。久しぶりに、昔のレコードをいろいろ聴いてみたくなった。レコード棚から、30年前のキース・ジャレットの名盤ケルン・コンサートを引っ張り出し、中袋から取り出してびっくり。白いカビだらけになっている。確か数年前は大丈夫だったのに。あわてて、ほかのレコードをランダムに取り出してみると、程度の差はあるが、やはりカビが生えているではないか。こんなときのために買っておいた特効薬があった。最新のナノテクで、レコードの音溝のあらゆるカビなどの異物を根こそぎ引っ掻きだす優れもの。透明な液体を付属の布につけて吹くだけで、みるみる黒く艶やかなレコード盤が蘇った。針のノイズも減って、音も新品のレコードのようにご機嫌だ。


【ジャケットは少しシミもありますが・・・】
 
【ピカピカの黒を取り戻しました!】

 カビの原因は、高温多湿な夏やこの冬ほどではないにしても厳しい寒さの積み重ねなど、湿度や気温の影響であることは間違いない。暖房や冷房をつけたり消したりしている室内は、思いのほか極端に室温や湿度が変化し、レコードに大きなダメージを与えたのだろう。

 そんな古いレコードはもう家にないから大丈夫。永久保存できるCDやDVDの時代なんだからと安心してはいけない。意外にも、これらのデジタルディスクは、気象の変化にもろいのだ。CDが登場してから20年も経つが、最近、わずか数年で再生できなくなるディスクのトラブルを耳にするようになってきた。音を記録しているアルミ層が腐食して穴が開いてしまうためで、極端な温度や湿度の変化が引き金になる。私の音楽CDは今のところ大丈夫だが。

 また、デジタルカメラやデジタルビデオで撮影した映像を書き込むことができるCDやDVDの場合、その記録の方式上、気温の変化や紫外線に弱い。ケースから出したままにしたり、車の中に放置したりすると、大切な思い出が消えてしまうといったトラブルも起りやすくなる。

 記録的な大雪と厳しい寒さのこの冬は、体調の管理だけではなく、これらのデジタルディスクの管理にも気を配った方がよさそうだ。

投稿者 高塚哲広


雨晴伝説

(2005/11/07)


 
サスペンス好きの私は、テレビでもちょくちょく2時間ドラマを見て楽しんでいる。先日、日本テレビで放送された秋の特選サスペンスの中で、興味深い地名が登場した。2時間サスペンスの常として、地方都市や名勝が舞台になることが多い。このドラマの舞台は富山県高岡市と氷見市周辺だった。旅情あふれる富山湾周辺の風景を満喫できるのも、2時間サスペンスの醍醐味なのだが、その中で登場した地名が、「あまはらし」である。セリフとして聞くとピンとこないが、すぐにJRの駅名からヒロインが降り立つカットがあり、その漢字が明らかになった。「雨晴」と書いてあまはらしと読むのだ。



誰もが、天気と関係あるのかなと思うにちがいないが、天気で飯を食っている私としては、大いに血が騒ぎ、すぐさま調べてみた。「雨晴」は、富山県の北西部、高岡市太田にある地名で、雨晴海岸は、岩礁や白い砂浜、松林がつづく景勝地として、富山県内有数の観光スポットだった。海岸からは、富山湾をはさんで、標高3000メートル級の雄大な北アルプス立山連峰をのぞむことができ、いろいろなホームページで拝見させていただいた四季折々の雨晴海岸の風情は、形容しがたいほどの美しさだった。


そして「あまはらし」の地名の由来は、あの義経伝説と関係があった。源義経と弁慶が、兄頼朝の追手から逃れ奥州に向かう際、この地に立ち寄った。そのとき突然雨が降ってきたので、弁慶が岩を持ち上げて雨が晴れるのを待った。その言い伝えから、「雨晴」と名づけられたのだそうだ。弁慶が持ち上げたという岩は義経岩と呼ばれ、圧倒的な存在感を示していた。

雨から急に晴れへと変わる天気は、日本海側では晩秋の今頃からよく現れるようになる。冷たい空気が日本海に流れ込むと、黒い雲がやってきてザーッと雨を降らせ、まだ雨が降っているのに、たちまち、日が差して青空へと変わっていく。この繰り返しがいわゆる「時雨(しぐれ)」である。義経と弁慶が見上げた空も、きっとこんなだったに違いない。山陰鳥取育ちの私は、ふとそんな情景を思い浮かべた。

ちなみに、この「雨晴」は、3年ほど前に日本テレビ系列で放送されたサスペンスドラマでも登場。つい最近では、他の民放制作のドラマの舞台にもなった。ロケをするにも何かと絵になる超有名スポットだった。


※写真は、「北陸の駅」H.SUWAさんのホームページから転載させていただきました

投稿者 高塚哲広


暑さいろいろ!

(2005/08/25)


 
毎日の生活に一番大きく影響するのは、気温だ。あす何を着ていけばいいのか、暑いか寒いかの微妙な感覚の違いは、季節の変化に敏感な日本人には、とくに重要な情報である。

今年の夏、気温で驚いたのは、札幌に出かけたときのこと。その日札幌は最高気温が13度までしか上がらないという寒さだったにもかかわらず、すれ違う人に半袖が目立つ。はじめは私と同じ東京からの観光客かとも思ったが、地下鉄に乗っている人も半袖が多い。

あとで地元の人に聞いたら、北海道は夏が短いので、7月になったらみんな一気に夏を楽しむかのように半袖になるんだと話してくれた。一度半袖を着たら、多少の気温の落ち込みなど気にしないというわけだ。

ただいま体感温度研究中!
【ただいま体感温度研究中!】

そうかと思えば、コンクリートで囲まれた東京の暑さは、夏を楽しむどころではない。

その都心の暑さを研究しようと、私の会社の同僚が、クールビズとは逆行する体感温度の観測?にチャレンジした。毎日Yシャツにネクタイ、上着を着用して、通勤時と昼休みにどう感じるかを15段階の暑いから寒いまでの感覚のレベルで記録するという荒行?だ。

毎日のように、暑い方の最高レベルに達し、ギブアップするものと思いきや、意外にもすべての時間帯で最高レベルに達したのは、8月1日から5日の週のみで、日中は33度前後なのに、夕方にはしのぎやすいレベルまでダウンした日もあり、気温以外の湿度や風のわずかな変化が体感に大きく影響していることを、あらためて認識させられたしだい。

お盆休み後の放送で厳しい残暑になると言った日も、彼の実観測では、並みの暑さで、上着は思ったほど苦痛ではなかったそうだ。これなど、秋に向かう日差しの衰えの変化も人はちゃんと感じているのかもしれない。むろん個人差はあろうが、今年の東京の夏は、天気が変わりやすかったのと同様、暑さも変化に富んだ結果となった。

欧米には、気温に湿度や風を取り入れ体感温度を計算する式もいろいろあるが、そう単純ではない日本の気温の感じ方を思い知らされた夏だった。

彼がチャレンジャーです。社内では上着を脱ぎ捨て一服!
【彼がチャレンジャーです。社内では上着を脱ぎ捨て一服!】

投稿者 高塚哲広