世の中はまたも3連休。朝の電車は櫛の刃がこぼれるように、長い椅子のところどころに空席が目立ち、涼しい気温と相俟って快適な通勤でした。いっぽうで幹線道路は連日渋滞。朝から晩まで行楽地方面への道は混んでいたようです。お休みに早起きして出かけた皆さんは今ごろお昼タイムでしょうか。
そんな休日にも打ってつけ、かもしれない美味をご紹介します。コロッケパンです。とはいえ、このコロッケパンは出来上がった状態で販売しているワケではありません。始まりは先週の晴れた昼休み。報道局の大先輩(スポーツニュース担当)とエレベーターに乗り合わせ「お昼ごはんはどうされるんですか?」と訊ねたのです。すると。日本テレビから数分歩いた所にある精肉店へ行くとのこと。その店頭に、目指すモノがあるというのです。長年プロレス中継に携わってきた彼の目が、一瞬ピカッと光りました。その目は、あたかも新進の選手に「タッグを組まないかと」無言で誘うベテランレスラーのような(そんなシーンを見たことはないですが)不敵な自信に満ちあふれていました。
…で、「組みます組みます」とばかりタッグを組んでその小さな精肉店に向かうと、実に香しい匂いが近辺に漂っています。店頭から見えるで揚げ場では、ご夫婦が次々と油に丸々としたタネを泳がせています。 そしてきつね色になった頃合いで油のプールサイドに上がった(揚がった?)コロッケやメンチカツはデカい!安い!のです。揚げたてのコロッケをたんと買いこんでソースをかけてもらったら、報道フロアに戻ります。すると大先輩の席の近くでは、すでに大量の食パンとマーガリンがスタンバイされておりました。懐かしい味のマーガリンを塗り塗りして、アツアツ、フワフワのコロッケをちょっとだけギュウっとつぶすように挟みます。そして…ガブッ…!!!!!(言葉にならず)。「大先輩についていってよかった!」としみじみ思いました。パンに挟んでいないほう、もう一つのきつね色は、メンチカツ。こちらはタマネギが若干粗めのみじん切りで、食感がじつに絶妙な感じです。しかもいまどき「良心的」というのも陳腐に聞こえるボリュームと安さ。感涙ものでした。いずれも、「あれは美味かった!」と喉の奥から思い出すような味と言えましょう。とにかくこういう素朴な味の旨さは、絶対に間違いがありません。凝りに凝った手順や味付けをしているわけではない。基本に忠実なつくりです。
秋の連休、家族揃ってお出かけする方は多いと思います。昨今は観光地やサービスエリアの飲食店のレベルがどんどん上がっているほか、コンビニやファミレスの増加によって、お母さんの負担をかけずに「ハズレのない」食事が手軽に楽しめるようになりました。でも。たまには素朴な味のコロッケパン、どうでしょう?遠方に出かけなくても、近所の河原でも公園でもいいんです。「あのときはみんなでお母さんの揚げたコロッケを挟んで食べたななあ」と思い出すこと請け合いです。そんな空想を膨らませる、コロッケパン。サクサクの衣の中に詰められるのは、何もジャガイモや挽肉だけではありません。あらかじめ思い出をも包み込めるような気がしたのです。
投稿者 近野宏明