#197  読了日記035 『中国古典名言事典』

(2007/08/17)


 

 そういえばこのところ「読了日記」もご無沙汰でありました。失礼しました。決して本を読んでいないワケではありません。読書の秋に向けてまた少しずつ掲載して参りますので、引き続きご愛顧を。今回は、もう15年以上本棚で素晴らしい存在感を示している、一冊の辞典です。

・諸橋轍次『中国古典名言事典』(講談社)

070817_中国古典名言辞典.jpg この写真、辞典をパソコンの上に置いてあるのは理由があります。中国古典における膨大な智の集積は、21世紀のコンピューターにも勝るとも劣りません。あまりに漢字の種類が膨大で、コンピューターでは扱えないという側面もあり、そのすべてをコンピューターが網羅するのは困難でもあります。なので(という後付けの理由)我が家では、この辞典はパソコンをアシストするかのように、すぐ横の本棚に立ててあります。

 さて。まず、何にも目的を持たずこの辞典を手に取り、あてずっぽうに開いてみましょう。偶然開かれたページを一読すれば、そこには「なるほど…」と唸る文があるはずです。と、断言したくなるぐらい幾多の名言がおさめられています。人生のさまざまな局面にぴったり寄り添い、社会をぴったり言い当てるような言葉の数々。「この状況、どうみたらいいのか」という疑問や、「あの立場ならどうすべきか」というふとした思いつき、ありますよね。そういうちょっとした穴に、まるで行動ジグソーパズルの一片をあてがうようにはまる名言、見つかります。

 いま試しにやってみました。よっ…と開くと、『老子』のページです。「軽諾必寡信」=「軽諾(けいだく)は必ず信(しん)寡(すく)なし」…軽々しく人に承諾を与えることは、結局、信義を欠くことになりがちである、という意味です。もう一度、別のページを。「欲当大任須是篤実」=「大任に当たらんと欲すれば、須(すべから)く是れ篤実なるべし」これは『近思録』からの一節。大きな仕事を任されたいと思うなら、心が篤実なことが必要ですよね、という意味。このように、どのページを開いても、「そういうものか」「確かにそうだ」「こうあるべきだよね」などと思うフレーズが必ず存在します。

 加えて、名言をおさめた書物の簡単な解説、名言ごとの索引が。さらには「人間」「自然」などの項目ごとの索引が充実。例えば「人間」といった大項目の中でも、「人間の本質→身体、容貌、容儀、養生」といった具合にさらに細分化されています。シチュエーション、テーマを入り口にして名言に辿り着けます。中国古典の入門書、最初の一歩を踏み出すガイダンスともいえる一冊でもあります。値は張りますが、十二分にお釣りが来る辞典です。

 私が最初に読んだのは、小学6年のとき。夏休みに親から渡されて「論語」だけは読みとおしました。当時は書き下し文や解説文を読んでも今ひとつよくわからないものがあったのですが、今となってはそれなりに「ふむふむ」と読めるように。…それはつまり「加齢」です。

投稿者 近野宏明