先日、東京・大田区にある「ANAグループ安全教育センター」にお邪魔しました。座学を中心としたいわゆる「社内研修施設」で、宿泊室なども完備した立派な建物。その一角には、過去に起きた航空機事故から学び、「安全」のために何が出来るかを学ぶ施設が整っています。
全日空機の3つの大きな事故に関する展示。ねじれた機体の残骸や座席が、もはやものを言えぬ犠牲者の代わりに、事故の悲惨さを語っているようでした。あとでお話を伺ったのですが、雫石事故(1971年)の事故機体の残骸は、事故から30年以上経って見つかったものもあるそうです。山菜採りに出かけた地元の方が山中でそれを見つけたとき、窓枠を貫く形で木が生えていたといいます。上空8000m以上での衝突。操縦不能になった全日空機は落下しながら空中分解し、地上に激しくたたきつけられました。そのため、残骸の一部は地中深くに突き刺さり、落ち葉や草に覆われてしまい回収されなかったものもあったのです。事故以来、地元雫石の皆さんは慰霊施設の整備や管理を献身的につづけておられるそうです。
ビデオや資料によって、各々の航空機事故の遺族や関係者のことばにも触れました。いまや身近な移動手段となった航空機。事故の確率はきわめて低いのですが、その1回の事故がどれだけ大きな影響をもたらすか、改めて感じさせられます。それだけに、展示ではなぜ事故は起きたのか、事故を教訓に何が改善されたのか、といったことにも力が置かれていました。
そうした航空機事故の原因に「ヒューマンエラー」が占める割合は6割。小さなエラーがきっかけとなって、信じられないほどの大事故につながるケースは少なくありません。ヒューマンエラーは誰にでもいつでも起こりうる、という見地に立って、体験実証するコーナーもありました。たしかに自分自身の過信や、思いこみは怖いと実感しました。
こと航空機の運航に限らず、ヒューマンエラーをいかに防ぎ、安全を確保するかはどの企業・団体にとっても喫緊の課題。この施設は、全日空の社内研修に支障が出ない範囲で見学を受け入れています。関心のある方は足を運んでみてはいかがでしょうか。
投稿者 近野宏明