木曜日。東京の朝は思ったよりも穏やかな陽気でした。午前中はわりあい強い日射しものぞいて、日なたに居ると、予報よりもちょっと暑い一日になるのでは、と思わせるほど。しかし夕方近くになると…。関東地方は南部を中心に、空模様が急変しました。
川崎市の中原区や高津区では、午後6時までの1時間雨量が90ミリ。気象庁は「記録的短時間大雨情報」を出しました。これは、気象庁が「大雨警報」を出して警戒をよびかけている時に、数年に一回程度発生する短時間に猛烈な大雨を観測した場合、その地域での一層の警戒をよびかける情報のことです。
川崎市高津区と多摩川を挟んで向かい合う、東京都世田谷区でもたいへんな雨やひょうが降ったようです。用賀付近では強い雨にまじって大粒のひょうが路面にたたきつけ、帰宅する人は商店の軒先などに身を寄せていました。このあたりに住む人に電話してみると、「外に停めてある車に穴が開くのでは」と思うほどの強い降り方だったそうです。それほどの「急変」ですが、天気予報はちゃんと当たっています。きのうの時点でそういう指摘がありました。傘を持たずにきょう出かけた方、不平を言いづらい状況です。
あすから6月。いよいよ雨の季節です。四国では深刻な水不足ですが、実は関東地方のダムも貯水率が決して高いとは言えない状況です。こればかりは空模様頼み。あまりに多すぎると困りますが、降らなくても夏に大変な思いをすることは必至です。ことしの梅雨はどうかといえば、どうも例年よりは少な目ではないかという予報がでています。皆さま水の無駄使いはやめましょう。
投稿者 近野宏明
人を騙してはいけません。子どものころから何度となく諭されてきたフレーズです。しかし先日、周到な準備のもとに人を騙すという体験をしました。騙す相手は、後輩の奥さまです。まもなく結婚披露宴をとりおこなう新郎新婦。私は、後輩たちの依頼を受けて、その宴で流されるビデオの一部に参加しました。
この新婦というのが、熱烈な私のファン(自分で書くと歯が浮くような感じですが)。去年・今年と、バレンタインデーにチョコレートも頂戴いたしました。そこで、新郎とその同期の面々は一計を案じました。とあるレストラン、仲睦まじく食事をする新郎新婦。そこで起きるハプニングとは!…というストーリー。つまり「ドッキリ」のVTRですね。
写真は現場に集合したチームが、綿密にうち合わせを行っているところ。使用するカメラは5台。二人の座るテーブルを囲んで、新婦には気付かれないよう配置されます。事前に入手した情報を元に、台本も作成。「ドッキリ」の成功を願って近くの神社を参拝したあと、お店のスタッフを交えての段取りの確認、機材の最終チェック。誰もが仕事と同等、もしくはそれ以上に(?)力を入れて作業にあたります。「同期の愛」ですね。かくして何も知らずに席へ通される新婦(と、すべてを承知の新郎)…。
披露宴はこれからですので、詳細はここでつまびらかにするわけにいきませんが、新婦は台本以上の「驚きっぷり」を見せてくれました。騙すほうも「よもやそこまで」というほどに。今回の場合は「驚き→喜び」に転じましたので、こう言ってはなんですが、騙す我々も清々しさを覚えたぐらいでした。みな一様に高揚した感慨を共有しながら、撮影のあとは食事会。もちろん新郎新婦も一緒です。普段は「騙す」といえば「事件」ばかりお伝えしている報道局の面々。「騙して・騙されて、誰もが楽しい」という、滅多にない一夜でありました。
投稿者 近野宏明
社会保険庁という役所には心底、唖然とさせられます。今度は5000万件の「不明年金」問題です。誰かに支払われるべき年金が宙に浮く。同時に、保険料を入金し続けたはずなのにその記録が残っていない…。『リアルタイム』でも小西キャスターのチームが中心に取材しています。
問題となっている「不明年金」ですが、主な理由の一つが、社保庁の入力ミスというから呆れるばかりです。たとえば「山崎(ヤマサキ)」を間違って「ヤマザキ」と入力したケース。あるいは転職などで、公的年金の種類を変えたため、どちらかの入金記録が引き継がれないケースなどなど。その積み重ねが「5000件」でさえどうかという大きな数字ですが、「5000万件」といいますから、もはや言葉もありません。日本の人口と比べて考えても、いかに多すぎるかが分かろうものです。
この失態、例えば銀行へ預金を下ろしに行ったら「あなたの預金はありません」と言われるようなもの。まあ通帳を紛失しても、銀行ならなんとか救済の道がありそうですが。それとて、銀行側に確固たる出入金の記録があるからこそできること。社保庁のやっていることはお金を扱う組織として基本がなってない、言語道断の事態です。お役所が個人のデータやその資産をいかにテキトーに扱っているかがハッキリしました。
しかも5000万件のうち1900万件は、いま年金をもらっている世代、60歳以上の方々と思われるデータです。つまり、すでに年金をもらっているのだけれど、勝手に減額されている人が大勢いるかも、というわけです。ああ何ともはや。
柳沢厚労大臣は、社保庁のずさんな管理を棚に上げて、「どこか欠けたところがある人は、ぜひ申し出て欲しい」と国会で答弁。しかしその救済策は穴だらけ。5年以上前の古い未払い分については、「領収書がなければ追加給付しない」というのだから驚きます。20年前、30年前の領収書なんて、だれが保管していますかね。安倍総理までもが「杓子定規に領収書とは言わないが、支払ったことの物証が無ければ給付できない」と。保険料を受け取ったハズの役所のデータが、いい加減な扱いの結果わけわからなくなっているのに、なんで加入者にその責任をなすりつけるのか、その神経が理解不能です。もらえるはずのものがもらえずに困っている年金加入者に領収書を出せと言う前に、役所の側でやることがあるでしょう。
だいいち、このご時世に政治家が「領収書」というキーワードを口にすることが笑止千万。あ、安倍総理に僭越ながら一つ打開策を提案させていただきます。「データは社保庁が責任をもって照合しますので領収書は不要!」といった抜本的救済策を発表する。と同時に、その場で松岡農水大臣に光熱水費の「領収書」を出すよう命じてはいかがでしょうか。遅ればせながらいくぶんは社保庁の失態を挽回し、国民の理解もこれまた遅ればせながらいくらかは得られる、一石二鳥の対応だと思うのですが。
投稿者 近野宏明
日々コンクリートとアスファルトの中にいると、自然に触れたくなるものです。それほどのアウトドア派ではない私です。しかし、ちょっとした距離できれいな緑や水があれば、出かけたくなりますよね。
先日は日帰り温泉に行ってきました。初夏のようなキラキラした日射し。お湯の上をゆく風はまだ「温かい」というにはまだ早い感じです。でも身体があったまり、汗をかき始めるとちょうどいい塩梅です。極楽極楽。昼ご飯をすませて店の外に出ると、さらさらと水が流れる音が聞こえます。橋の下にはせせらぎが。周囲は木々がゆたかに茂っていて、空気も酸素の含有率が都心に比べて高いんじゃないかと思うぐらい、濃い感じがします。
私の実家のある地域は、新潟平野の中なので、歩ける範囲にはこんな山水は有りません。でも、見渡す一面の田んぼで、苗が緑色濃く伸びてくるこの時期、その上を吹き抜ける風も同じような「濃さ」を感じたものです。考えてみると、苗の足元には水が張ってあるわけです。せせらぎのように流れてこそいないものの、つねに水の豊かなところとは言えましょう。小学校の教室はクーラーがありませんでしたが、当時は三方が田んぼに囲まれていましたから、風も通り抜けやすかった。生温かいビルの谷間とは大違いでした。いま小学校の周りはどうなっているかなあ。
せせらぎの写真、見ているだけでほっとします。
投稿者 近野宏明
本日は「タワー」で二題。まずは最近何かと話題の東京タワーです。観光名所としても往時の勢いが戻ってきたようで、週末ともなりますと、周囲の道路にはそぞろ歩きをする人がたくさん見受けられます。 きょうも木原さんのお天気コーナーで、タワーから中継がありました。平日と言えども、けっこうな混雑で、人気の程が伺えます。
かく言う私が東京タワーに最後に上ったのはいつだったか…10年も経ちますかねえ。あのころはまだ汐留も更地だったし、見回しても今のような超高層ビルは数える程しかありませんでした。日々、東京タワーは相対的な高さを減じているわけです。相対的な高さが低くなるのに、観光名所としての勢いが再び増しているとしたら、これはご同慶の至りであります。
しかし皆さんもうご存知のとおり、タワー無くして放送無し。何しろ「日本電波塔」っていうぐらいですから。東京タワーのウェブサイトをご覧頂くと詳細な説明がありますが、日本テレビのアンテナもちゃんと乗っかっています。昨今の映画や小説に描かれる、センチメンタルな想いとは別に、きわめて実利的な役割を担ってもいることをお忘れ無く。
そしてもう一つのタワーがこちら。汐留の日本テレビ。本社屋は正式名「日本テレビタワー」なんです。「日本・テレビタワー」ではありませんので要注意。高さ200m近いこのタワーに、きのうハクビシンが出没。ビックリしますよね。どこから現れたのか、このハクビシン。高いところも俊敏に上っていくようですので、もしも東京タワーの鉄骨あたりで見つけたら、捕獲もさぞ大変ではなかろうかと。日本テレビの広場あたりで出没したのはまだよかったのかもしれません。
*今回この2枚の写真を載せたのは、「映りが良かったから」という理由が大、であります。よく不動産の物件案内にあるような、「抜け」の空が真っ青な写真。ちょっと見ると模型のようにも見えますね。
投稿者 近野宏明
いま金曜日の午後2時半を回ったところです。きのうの夕方発生した愛知・長久手町の立てこもり事件は、現在も続いています。まもなく発生から24時間。きのうは放送が始まった直後に一報が飛び込みました。そのまま1時間45分にわたって、まさにリアルタイムでお伝えしたのですが、まさかここまで長引くとは思いませんでした。
きょう、現時点で予定される『リアルタイム』の項目案を見ますと、この事件をはじめとして殺伐たるニュースがずらりと並んでしまっています。本当に残念です。新聞のテレビ欄などで紹介の通り、本日のリアル特集は「隣の晩ごはん」ですが、心温まるほのぼのとした話題は「隣の晩ごはん」だけ、と言いきってかまわないぐらいのラインナップなのです。ニュース番組である以上、世の動きと密接に関連するのは必定。それにしてもきょうは…というニュースばかりなのです。
報道の仕事をしていますと、「なにか大きなニュースが起きないかな、なんていつも考えているんでしょう?」と言われることがあります。しかし断言します。私はそんなふうに考えることはまったくありません。凄惨な事件や、鬱々たる気分に襲われる事故、またかと呆れる汚職・不正…といった類のニュースは、やっぱり大嫌いです。初夏のような爽やかな金曜日、誰でも清々しい気持ちで週末を迎えたいものですよね。そのお手伝いがままならない状況、繰り返しになりますが非常に残念です。
放送まであと2時間余り。一つぐらい明るく心が和むニュースが入ると良いのですが。どうなることでしょう。
投稿者 近野宏明
自分の見聞きしたものごとや自分と同じ体験などを書物で読んだりすると、嬉しくなるものです。書き手が憧れの対象になりうる、あるいは敬意を抱いている人物であれば尚更のこと。最近読んだ本で、きわめて些細なことですが、そういうことがありました。読了したのは、吉行淳之介『ダンディな食卓』(グルメ文庫=角川春樹事務所)。洒脱で都会の大人の雰囲気が香り立つ作家の手になる、食べ物のうんちくや、食べ物を媒介とするエピソードの集成です。その中で、自分の嗜好や行状と同じという話が2つ、みつかりました。
まずひとつ。日本テレビの近くに、有名なお寿司やさんがあります。夜は値が張るようなので、時間の余裕がある昼時に限って、たまに行くようなお店です。その店でお酒を飲む方を見ていると、そのつまみとして出される皿が何とも魅力的に映るのです。新鮮な長葱の白い部分を粉のように細かく刻み、そこに削り節を混ぜ、醤油を少し垂らす。ただそれだけ。お客は皆、たいそう美味そうにそれをチビチビとつまんで盃を傾けています。お酒はあまり飲まない私ですが、あれはいいなあと思っていたわけです。
その至極簡単なつまみが、吉行淳之介のお気に入りでもあったようです。「あなたの好む簡単な酒のサカナは」という料理雑誌からのアンケートに「生の葱をきざみ、鰹節を削って混ぜ合せ、ショウユをかける」と答えたといいます。このくだりを読んで、私が「それだ!」と思ったのは言うまでも有りません。もっともインターネットで調べると、同好の士はかなりいるようですが…。
もうひとつ。「それは私だ!」と心の中で叫んだのは、著者が友人と酒を飲んでいたときの話。雑談のなかで連載のネタが見つかり、メモをしたというのです。そのメモが「アイスクリーム。古本屋。本を高く売る」というもの。著者は翌日このメモを見る。しかし「もう一項目くらい書いておかないと、かならず忘れますよ」と言った友人の警告どおり、「なんのことか分からない」と相成ったそうで。これ、まさに私です。『リアルコンノ』のネタを思いつくと、キーワードを自分の会社アドレスに携帯メールするのです。しかし出社してそのメールを開くと、いったい何のことやら分からないことも。…惜しまれながら世を去った大家と同じだからといって、これは喜んではいられませんね。
投稿者 近野宏明
当番組のコメンテーターとしてもおなじみ、山本博さんの試合を見てきました。アーチェリーを生で見るのは私、初めてです。ドイツ・ライプツィヒの世界選手権と北京五輪への切符をかけた大事な試合。日曜日は見に行こうと、ずっと空けてありました。
土曜日(決勝ラウンド初日)の夜。ずっとから密着取材をしているディレクターから、泣きそうな声で電話がありました。「きょうの結果がふるわなかった」というもの。決勝ラウンド(4つの距離で36射ずつ、合計144射の合計点で競う)の最初に行われる「90m」で、今まで見たこともないショットが2本あったというのです。10点満点の4点と3点。出遅れた山本さんは、続く「70m」でトップ。それでも、ドイツと北京への切符が手に入る3位までは、16点もの差。7位で初日を終えました。ご本人も報道陣に対し「一年の中の一番うまく行かない日がきょうに巡ってきた」「(逆転は)不可能に近い状況」と話しました。取材チームはこれから必勝祈願に行くから、とのことでした。
こうなると、日曜日に行くべきかどうか迷います。先生は本当に気配りの人。私が応援に来ていると知ったらこちらに気を遣われること必定です。トップアスリートゆえ私どもの心配には及ばないでしょうが、初日の成績が成績だけに、余計な気疲れをさせてはいけない。…結局、デスクやディレクターとも相談の上、「試合が終わるまでは、見つからないようにこっそり応援しよう」ということになりました。
そして朝の練習から最後まで、すべてのショットをひっそり見ていたのですが、息を呑むような大変な緊張感です。日曜に行われたのは点差が縮まりにくい「50m」と「30m」。西よりの風も強く、一言で言えば悪条件です。それでも、先生はきのうの不本意な出足が嘘のように、順位を上げていきます。悪条件のときこそ経験が物を言う、と話していたアーチェリー協会の関係者の言の通りです。一時は3位に1点差にまで肉迫しました。しかしわずかに及ばす。44射を終えて、2点差の4位。世界選手権は「補欠」と決まりました。
尋常ならざる集中力を維持しながら144回も矢を放つ決勝ラウンド。そのうちほんの2~3本が不本意なだけで、こういう結果になりました。「最後の30mは、集中しきって、他の選手のことは全く気にならなかった」と話していました。それでも競技というものは厳然と結果が出ます。冷酷です。
帰路の新幹線に乗ろうとホームに上がると、先生から私にメールが届きました。「こんなことを30年以上やっているんですよ」と、照れくさそうな絵文字つきの文面でした。「自分自身が悔しいというより、家族や応援してくださった皆さんに申し訳ない」と話していた、山本先生のお人柄がにじむメールです。
山本先生の北京オリンピックへの道。世界選手権での日本代表の成績によっては、じつは極めて限られた条件ですがかすかに残されています。これまでも幾多の逆境を乗り越えてきた競技人生。まだ、何があるかわからない。これからも先生らしい「意地」を見せてくれると信じています。先生の書いた本のタイトルにもあるじゃないですか。「最後は願うもの」だと。
投稿者 近野宏明
このところ、東京では超高層住宅の建設がとどまることを知りません。湾岸地域はもちろんのこと、旧来の住宅地でも駅前再開発に付随して、超高層マンションが空へ伸びているほど。本書はその現状をもとに、避けられない大地震への警告を発する一冊です。
・渡辺実 『高層難民』(新潮新書)
去年の春、日本テレビ報道局は東京直下型地震を想定して、詳細なシミュレーションドラマを放送した。著者はその番組を始めとして、「防災・災害のご意見番」をお願いしているジャーナリスト。豊富な現場取材をふまえて実生活に役立つ提言を発信し続けている。
その著者をして「ショッキングな記述もあるかもしれませんが、これはフィクションではなく避けられない現実です」と云う大地震の怖さ。わけても、だれも経験したことのない「超高層ビル・超高層住宅」での被災には、どのような恐れがあるのか。この本で知ったことを、超高層マンションに住む知己に話してみると、聞いた側は言葉を失ってしまう。多くの人がそれだけ現実を知らずに、あるいは現実から目を逸らして住んでいるのだ。
建物そのものは揺れに耐えたとしても。例えばエレベーターに閉じこめられたら、どれぐらいの時間を耐えねばならないか。その間の栄養補給や排泄はどうするのか。電気が止まったら、エレベーターが止まったら、地上まで降りて物資を受け取り、自宅に戻るという活動がどれだけ困難か。超高層マンションという巨大住宅塔が、生活の場としての機能を失ったら、周囲の避難所はどうなるか。
きわめて具体的に、データをまじえて人類が今まで経験したことのない状況がシミュレートされる。そしてどうやってその苦境を乗り切るか、「高層難民」の生き残りのための方策も紙幅を割いている。同時に、大都市特有の「帰宅難民」「避難所難民」の対策も。ただ読者を脅かすだけという「防災本」が多い中、「では、どうしたらいいのか?」を提言している点が、この著者に一貫している姿勢である。超高層マンションに住む人もそうでない人も、ぜひ一読を。そして具体的な対策をはじめていただきたい。
投稿者 近野宏明
歓送迎会、結婚式、パーティー、懇親会…。さまざまな会合がありますが、人前で挨拶するのが苦手な私です。こんな仕事をしているのに。スタジオでカメラを相手に話すぶんには、まだ平常心を保っていられるのです。しかし大勢の人を目の当たりにすると、なにか大きなプレッシャーがじわりじわりと押し寄せてくるのですね。困ったものです。
私はもともとアナウンサーではありませんので、「話す技術」に関してはプロとは言い難い。ですが、テレビに出る仕事を続けていると、周囲はそう見てくれません。「きっと話が上手に違いない」「面白いことを言ってくれるのでは」という、買いかぶり満載の無言の期待を勝手に感じてしまうのです。思いこみかも知れません。というか、きっとそうでしょう。でもねえ…。私の挨拶はどうか、「それなり」だと思って聞いてくださると助かります。
挨拶というともうひとつ、スピーチとは違う挨拶です。こちらは比較的得意です。朝、会社に入るときに警備員さんに挨拶するのですが、前後の人を見ていると、いまいち元気がない人もいるんですよね。残念です。テレビ局のみならずどの組織でも同様と存じますが、挨拶は重要です。新入社員のころ、「とにかく仕事より先に挨拶を身につけるように」と言われたものです。
そんな私、先日悔やまれる思いをいたしました。その日はいつもより随分早く家を出て歩き始めました。まだ町が眠りから覚めきっていない時間帯です。駅までの道をひとりゆくと、少し先を新聞配達の人が自転車で右に左に、朝刊を投函していきます。…と、その配達員(おそらくアルバイトと思われる女子学生さんか)が突然、「おはようございます」と挨拶をしてきたのです。その挨拶があまりに爽やかで、虚をつかれた私はじつにあいまいな返答しか出来ませんでした。「あ、おぁよぅごじゃ…」みたいな感じだったはずです
じつに悔しい。挨拶に関してはちょっとうるさい私としたことが…。あの爽やかさを真っ正面から受け止めて、「爽やか返し」と呼ぶに相応しい挨拶を返したい。そんな想いが膨らんでおります。それにはまず、相当の早起きが条件になるのですが。挨拶の道も厳しいですね。
投稿者 近野宏明
カレンダーはきのうまで4連休。しかしきのうも我々は出社、インタビュー収録を行いました。きょうの『リアルタイム』で放送予定ですので、そちらをご覧下さい。ということで、まったく大型連休は縁遠いまま、今年も当たり前のように5月第2週を迎えました。
そんな土曜日。私にとってはこのGW最大のイベントがありました。我らが田宮栄一さんご夫妻、金婚式の宴です。『リアルタイム』チームの面々もお招きにあずかりました。
会はきわめて和やかに、そして楽しく進みました。田宮さんゆかりの方々の祝辞は、「へえ」「すごいなあ」と思わずに居られないエピソードが満載。聞き漏らしてはいられません。列席者に配られた冊子には、ご夫婦の歩みがたくさんの写真とともに紹介され、目を奪われます。お二人の仲睦まじい様子や、目の中に入れても痛くない可愛いお孫さんとのショットなどなど。
しかしそれらを凌駕しようかというほど我々の注目を集めた1枚は、田宮さんの警視庁時代の写真。ときは鑑識課長の頃。田宮さんはスーツに白手袋といういで立ちで、日本の事件史に残る「深川通り魔事件」の現場検証に臨場しています。路上に残されたベビーカーを囲んでいる大勢の制服警官の中心に、田宮さんがいるのです。これがじつに颯爽として格好いいのです。現役バリバリの、まさに脂の乗った男の姿です。
さて、もう一つ素敵な話が。田宮さんは金婚式に合わせて、奥さまに指輪を用意しておられました。そしてこの日、会のさなかにサプライズで贈られたんです。その指輪を事前にこっそり見せて頂いたときの様子が、きょう掲載の写真です。市民の安全第一、家庭はどうしても二の次になってしまう警察官の激務、そして退官後も別のフィールドで大活躍、さらに70代の中盤を迎えた田宮さんを連日事件現場へ引っ張り出す『リアルタイム』…。田宮さんにとっては、奥さまの支えあってこそ、ということなのでしょう。その感謝の気持ちをきちんと形に現す田宮さんなのです。「金婚式」の会に出席するのはみんな初めてでしたが、あったかい気持ちで帰路に就きました。
投稿者 近野宏明
カレンダーは4連休。しかし私たち『リアルタイム』は普段どおりの放送ですので、きのうもきょうも出社しております。きのうの憲法記念日、早めに出社してあれこれ済ませた後、所用があって銀座を歩いてきました。汐留から銀座4丁目交差点までは10分ちょっと。皐月の陽光のもと、午前中から大勢の人たちが漫ろ歩きをしています。目的地をめざして真剣に歩くとちょっと汗が浮かぶぐらいの日射し。傍らを自転車でスイスイ走りゆくカップルが爽やかで、何だかじつに羨ましい。きっと近所にお住まいなんでしょう。ともあれ、右を見ても左を見ても、祝日です。
用事を済ませた帰り道。表通りではなく、路地を通って進みます。夜のお店が中心の街路は、さすがにひっそりしていました。しかし歩を進めると、あちこちから「バリバリ」「キィーン」という作業の音が聞こえてきます。連休を利用して、あちこちで店舗の改装や、新しいテナントの仕上げ工事をしているのですね。東京はミッドタウンだ、新丸ビルだと大規模開発ラッシュ。街は大きく生まれ変わっていますが、小さな路地でも日々是新陳代謝。工務店や照明設備会社の名前が入ったトラックやバンが、路地に沢山止まっていました。東京という街のエネルギーを感じました。
とまあ、世の中多くの方たちがこうして仕事をしているわけです。私にとっては「同志」ですね。そして午後。祝日を羨みつつ仕事に勤しむ…そんな私の気持ちを察してくださった田宮栄一さんが、手土産の包みをぶら下げて報道フロアに現れました。大福です。コメンテーターに気を遣わせてしまうなんて、ひどいキャスターですが…。やっぱり遠慮無く頂戴した私。美味しい…。どうです、大きくたしかな幸福に満ちたこの表情。まさに「大福」であります。
投稿者 近野宏明
書物を著したい。わけても小説を書きたい。人々の心を震わせる、そんな小説を。…文学に魅せられた人なら、そう考えたコトがあるかもしれません。本書は、現役の作家による、小説執筆のための講義をまとめた三部冊の最終刊。小説を書こうと思わない読者にとっても、日本現代文学のよきガイドとなる一冊です。
・三田誠広 『書く前に読もう 超明解文学史』 (集英社文庫)
著者は言わずと知れた芥川賞作家。早稲田大学文学部で客員教授を務め、創作講座を持っています。私が早稲田大学文学部(私は史学科でしたが)在学中から、すでに授業はありましたが、常に人気のコマでした。
この本のプロローグにはこう記されています。「小説にとってもっとも重要なことは、時代状況に合わせたテーマの設定と、それにふさわしい文体の確立なのです。そのためには、文学史を学ぶ必要があります」その方法は簡単。「この本だけを、最後まで読んでください」「いままでの本(=三部冊の前二冊・近野註)と併せて、この本を読んでいただければ、それで完璧です。あなたはすぐにでも、偉大な作家への第一歩を踏み出すことでしょう」ということです。何という自信の現れでしょう。これほどまでに確信に満ちた文芸指南がいままであったでしょうか。そうか、この時点で私もすでに「第一歩」の有資格者。まあ第二歩がどうなるかが問題なのですが…。
創作の手引きとしてという本来の目的以外に、本書はよき読書案内書のひとつという役割も兼ねています。文学史に占める様々な流れ。個々の作品群や作家たちがどういう時代潮流のなかで脚光を浴びるに至ったか。テーマ設定と文体という、時代と密接に関わる要素を、著者は明解に繙いていきます。この本で紹介された小説を、私は何冊も読むことになりました。なるほど目から鱗の落ちる思いを体験できたのは、本好きにとって喜ばしい限りです。
で、この本のタイトルは『書く前に読もう…』。あらためて、私には実際に「書く気」はあるのか。拙稿『リアルコンノ』や『乗りもノート』を読んだ親しい人たちからは、「書け書け」と言われているのです。しかしこればかりは…ううむ。書きたい内容は決まっていて、最初の一文は決まっているのですが、乗り越えるべきはその先です(わー告白してしまった)。三田先生の三部作をもう一度、熟読して「第一歩」を再確認するとしましょう。
投稿者 近野宏明