統一地方選挙が終了しました。参院補選から各地の議会選挙まで、津々浦々で投開票が行われましたが、私が一番注目したのは、長崎市長選挙の結果です。市の課長だった田上富久さんが当選。選挙戦のさなかに凶弾に倒れた伊藤市長の娘婿、横尾誠さんは僅差で敗れました。
この結果を見ての考えることの一つは、長崎市民の投票行動。市長の突然の死、そして東京で新聞社に勤務する娘婿が職をなげうって遺志を継ぐ…。いわゆる「弔い合戦」です。投票3日前の時点では正直なところ、「これは、横尾さんの当選は固いな」と思いました。しかし結果は「予想外」に近いものでした。
これまで数多くの選挙で、「弔い合戦」が行われてきましたが、多くは亡くなった前職の関係者が当選を決めてきました。自分の地域で弔い合戦が繰り広げられることは滅多にありませんが、私など常々「それはそれ、これはこれ」、つまり「前職は前職、後継者は後継者」と峻別して考えるようにしてきました。
今回の長崎市長選は、そういう考えに基づいたのか、悲しい事件と今後の行政付託とを別々に考える有権者が多かった、という結果です。市長の死という「感情」を乗り越えて、「実務手腕」を選んだ投票行動、とでも言えましょうか。たしかに、田上さんの訴える「世襲への危機感」を市民が敏感に感じ取ったのかもしれません。
いっぽうで横尾さんの立場で考えると、「無効票」「期日前投票」の扱いが気になります。期日前投票の総数は7000票以上。ここで伊藤市長の名を書いた人の票はすべて無効になりました。もし事件後であれば、横尾さんに入れたのに…という人がどのくらい居たか。(期日前投票では田上さんも0票ですが)。票差が1000を切っているだけに、横尾陣営としては釈然としない所もあるでしょう。今後、公職選挙法がどう見直されるかも注目されます。
まったく別の話ですが、新市長の田上さんはこれまで課長職。いま市役所のサイトで組織図を見ても、やはり県庁所在地だけに、部長職だけでもたくさんの職があります。田上さんの「上司」はどんな気持ちで新市長を迎えることになるのか。一気にトップに立つ田上さんがこれまでの「上司」をどう使いこなすのか。そのあたりもじつに興味深いものがあります。あれこれと思うところの多い選挙結果です。
投稿者 近野宏明