#154  食文化

(2007/04/04)


 

 大きなタイトルを付けましたが、それほど大層な内容ではありません。最初に念を押しておきます。

 先日。朝たまに行くドーナツショップでコーヒーを飲んでいたとき。店内はビートルズの曲が次々と流れてきました。誰もが知っている佳曲ばかり。そのとき、テーブルはほぼ満席。近くの学習塾?に子どもを送ってきたと思しきママたちが大勢席を埋めています。にぎやかです。就学前の小さい子を連れたママも。子どもの嬌声、ママの叱り声、ママ同士の四方山話。まあにぎやかです。

 そこに流れるビートルズ。「ドーナツ&コーヒー&ビートルズ」です。その三点セットで言うと、絵に描いたようなアメリカナイズされた光景(ビートルズはもちろんイギリスのグループですが)。でも今ここにアメリカからの観光客が入ってきたら、どういう心持ちでこの日本の光景を眺めるのか。確かに店内はアメリカのまま、かもしれませんが、よく見ると和風や中華風のメニューもあるし、店の回りは日本らしい駅前繁華街だし…。ちょっとその気になって考えてみたりします。

 こういうロールプレイ、よくやるんです。テレビを見ていたら、とある私鉄沿線の小さなスパゲティ屋さんが紹介されました。初老の夫婦がやっている、和風スパゲティが本当に美味しい店。私も昔よく行った店です。もう20年以上はその場所でやっていると思われ、味も店構えも、完全にその一角に馴染みきっています。でも、もしここにイタリア人旅行者がたまたま訪れたら…。海苔とか明太子とか、もはやイタリア料理と言うよりも日本食です。イタリア人は「こんなの違う!」と怒るかもしれませんが。

 イギリス・ロンドンでのこと。「Tradition& imagination」と大書された看板の、イタリア料理店に入りました。はっきり言ってここでの料理がものすごーく不味かった。ひどかった。まったくTraditionは感じられず、作り手の勘違いに基づくImaginationだけでしたよ。イタリア人じゃない私も「これは違うよ!」と心の中で叫びました。

 我が日本の農水省は、海外にある日本食レストランの推奨制度を検討しています。伝統的な日本食を提供すると標榜する店ならば、それこそ箸の上げ下ろしまで日本風に、と求めたくなるのでしょう。でも日本の外食産業を見るにつけ、食べ物やそれにまつわる文化は、その土地に根を下ろしてしまったらもう誰にも止められない。これは自明のような気がします。「本国」の感覚とは別。いいものはわざわざ推奨しなくたっていいだろうし、こちらが首を傾げるような店でも、現地で人気だったら目くじら立てても仕方がないのでは。イタリア、アメリカ、フランス、中国に韓国…世界中の味(いずれも日本風アレンジを含む)を自分の町で食べられる日本に暮らす皆さん、どう思いますか?

投稿者 近野宏明