#137 読了日記026 『陛下の御質問  昭和天皇と戦後政治』

(2007/02/26)


 

・ 岩見隆夫 『陛下の御質問 昭和天皇と戦後政治』 (文春文庫)

 激動の時代、昭和天皇は折々にどのようなご質問をされたのか。その「御質問」にほの見える昭和天皇のお人柄、お考えとは…。いわゆる「内奏」とよばれる天皇への内外情勢の報告・進講を行った、国内外の政治家や高級官僚などの証言を中心にした、興味深い労作。
ときに鋭く、ときに穏やかに、またあるときはユーモアを交えて。昭和天皇が発した「御質問」をめぐるエピソードは、近現代史を学んだ者にとっては実に興味深い。資料的価値も兼ね備えた一冊である。

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  ところで私は天皇皇后両陛下をはじめ、現在の皇族方には質問をしたことはありません。しかし、昭和天皇には質問をしたことがあるのです。勿論、記者としてではありませんが。それは1983(昭和58)年4月のこと。昭和天皇の82歳の誕生日に合わせて、手紙を書いて皇居に送ってみたのです。何しろ当時の私は10歳。小学5年生になったばかり。こわいものなし、だったんですね。

070225_昭和天皇への手紙.jpgもしかしたら、社会科の授業で日本という国のしくみを学んだ頃で、興味をかき立てられたのかもしれません。「象徴」ってどういうこと?という話になったのでしょう。そこで、「天皇陛下はどんなようすで暮らしておられるのだろう」という素朴な疑問を、三枚の便箋にしたためたのです。写真はその手紙のコピーです。まずは書き連ねました。自分のこと、家族のこと、住んでいる町のことを。そして「陛下はどのように毎日を過ごされているのでしょうか」「陛下の大好きなことはなんですか」などとお尋ね申し上げたわけです。『陛下への質問』です。文末には「どんなに短くてもかまわないので、返事を頂けるとうれしいです」とまで書いています。ずいぶん念入りな小学生ですね。

  後日、返事の入った封書が届きました。ドキドキしながら封を切ると、陛下からの返信…ではなく、侍従が書いた手紙が入っていました。すこしざらっとした、和紙のような趣も感じる縦書きの便箋に、万年筆で丁寧に書かれた文面。そこには、陛下の公務や、休息時間の過ごし方などが、小学生にもわかるよう説明されていました。そして陛下が大好きで楽しみにしているのは「大相撲」とも。翌日、学校にその手紙を持っていき、仲間に見せて報告したのは言うまでもありません。

  今にして思えば、このやりとりが「自分を含む多くの人の好奇心を、自分の行動で満たす」という原体験になった気がします。それは取りも直さず、取材記者の仕事に通底します。『陛下のご質問』を読むとき、24年も前の思い出がよみがえります。まったく個人的な、普遍性のない読書体験です。

投稿者 近野宏明