かの国では、来年の決戦に向けての名乗りが相次いでいます。アメリカ・大統領選挙のことです。民主党はヒラリー・クリントン上院議員に続いて、バラク・オバマ上院議員も出馬を表明しました。かたや「史上初の女性大統領」を、対して「史上初の白人以外の大統領」を、それぞれ目指すことになります。
オバマ候補の地元、イリノイ州のスプリングフィールドという街は、私もささやなか縁のあるところです。高校生だった19年前、この街でひと夏を過ごしました。テレビ局に勤める(今となってはなんという偶然!)父親、専業主婦の母親、そして2人の男の子。ごく一般的な家庭にホームステイしたのです。それゆえ、今回のスプリングフィールドからの記者リポートは、目を皿のようにして見入ってしまいました。
この街はイリノイの州都である以上に、16代大統領リンカーンゆかりの地として有名です。ここでは街のあちこちに、リンカーンを偲ぶ施設やモニュメント、リンカーンの特徴有る風貌をかたどった表示物などがあるのです。南北戦争による国家分裂の危機を乗り越え、奴隷解放を宣言したリンカーンは、街の誇り。当然オバマ氏もそれを意識しての言動が目立ちます。「出馬宣言」を行った旧い州議事堂は、147年前にリンカーンが選挙の拠点を置いたところ。私のアルバムにも議事堂の威容はしっかりおさめられています。
オバマ氏は出馬宣言で気勢を上げました。「この場所でリンカーンはかつて言った。『分断されたアメリカよ、共通の希望と夢を持って一緒に立ち上がろう』と。そして私は今あなた方の前に立ち、大統領選挙に立候補を宣言する!」と。分断されたアメリカを憂うリンカーンの発言をゆかりの地で引用しながら、イラク問題などをめぐって迷走を続ける現下のアメリカへのメッセージを謳いあげたわけです。なるほど、「リンカーンの街」であるスプリングフィールドの市民で埋め尽くされた会場が異様な熱気につつまれたというのも、容易に想像がつきます。
アメリカ大統領選挙は長い長い政治イベント。アメリカ流民主主義システムを国民が再確認する定期的なプログラムなのだ、と意味づける向きもあります。ならば、単にブッシュ政権の8年間を検証するだけでなく、アメリカの有権者自身が、この8年間の自らの政治行動について検証・再確認してほしいと思います。望むと望まざるとに関わらず、アメリカの有権者が下した判断が世界情勢に与える影響はあまりにも大きいのですから。
投稿者 近野宏明