#129 読了日記024 『満鉄全史 「国策会社」の全貌』

(2007/02/07)


 

 本稿でも複数回「日露戦争もの」を取り上げましたが、本書は日露戦争で日本が得た直接の戦利にかんする一冊。満州をめぐる日本外交や大陸政策を繙きます。

・加藤聖文 『満鉄全史「国策会社」の全貌』 (講談社選書メチエ)

070207_満鉄.jpg日本の満州支配の中核的組織と位置づけられる「満鉄」=南満州鉄道株式会社。その40年ほどの社史は、以後の歴史で巷間思われているほどの一貫性も統一性も無い、そのことを著者は序文で強調している。「近代日本の迷走を体現」「満州支配は何ら統一された意思も構想も実行もないまま、さまざまな矛盾を抱えながら進められ、そして破綻していった」。
 膨大な資料に基づく設立から解散までの通史であるいっぽう、ところどころで多士済々の列伝ふうエピソードも加えられて、読み物としても非常に面白い。しかし、読み進むにつれて、ちぐはぐな組織運営、政治や軍事による一貫性のない容喙、組織の機能不全と、斎藤健が『転落の歴史に何を見るか』(ちくま新書)で指摘したのと同様の、日本近代の凋落が手に取れるように表現される。その結果至った、究極的な責任の欠如。本書を虚心坦懐に読みさえすれば、少なからざる人々がいまなお抱く、特急「あじあ号」に代表される満鉄ノスタルジーなど吹き飛んでしまうであろう。

 ところで興味深いのは、100年前の世界では「鉄道」が植民地支配の要諦であったこと。中国大陸でも、鉄道を巡る列強の争いが優劣を決する重大な要素だったのですね。その中国は21世紀のいま、国際社会に大きな存在感を示すまでになりました。ではいま中国の何が、国際社会にとって共存共栄のカギになるか、私は様々な人に訊ねてみました。「エネルギー」「環境」「水」…それぞれの立場からの答えはじつに興味深いものが。日本は近代の凋落から何を学び、21世紀にどうその反省を活かすのか。その立場にない私でも、あれこれと考えを巡らせるきっかけとなる一冊でした。

投稿者 近野宏明