#113  季節もの

(2006/12/27)


 

 ちょっと時季を逸しましたが、クリスマスものをもう一つ。近年の映画でのお気に入りの一本。『ラブ・アクチュアリー』(03年、英・米)について。ご覧になった方も多いかと思いますが、クリスマス直前のロンドンが舞台。19人の男女が織りなす9通りの愛のかたちを巧みに1つに練り上げた群像劇です。

061225_ラブ・アクチュアリー.jpg肝心の部分はリアリティを失わないうえ、登場人物同士の横のつながりも自然に設定。ともすればちぐはぐになりがちなオムニバス形式が継ぎ目無くつながっていきます。(←「アンサンブル形式」という表現も。なるほど。)そしてクリスマスの夜に9通りの愛は…。クスッと笑える、キュンとする、ホッとする。大上段に構えたところのない、日常の愛が程良い感じで描かれているのです。これはなかなか出来ないですよ。最近の「感動作」がどうしても「映画的不自然さ」「映画的高邁さ」「映画的押しつけ感動」が鼻につくもので…。

 良いシーンがたくさんあるのですが。映画の終盤、学校で行われるクリスマスイベントで、少女がマライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」をソロで歌い出します。その上手さ。ワケありのキャストも思わずその歌声に呆気にとられるカット。どこでも行われる「学芸会」。そこでの一曲がいくつもの愛にグルーヴ感を増すのです。
 家族で過ごすこと、愛する人と過ごすことが本旨とされる日。その断片の積み重ねが、見る側にもあたたかい気持ちをじんわりと抱かせる一本です。ということで、クリスマス、そして冬には欠かせない映画。ついDVDの棚に手が伸びてしまう、私にとっての「季節もの」になりつつあります。
 
 ところで。ここからは「乗りもノート」に書くべきかも知れませんが、登場人物の乗る車も面白いんです。ヒュー・グラント演じる若き首相の車はシルバーのダイムラー(ジャガーXJかも)。傷心をかかえ南仏の隠れ家で執筆する小説家は古いサーブ900に乗る。妻を亡くし、義理の息子の小さな恋を応援する中年デザイナー?が駆るのはランドローバー・ディスカバリー。前述の少女の母であるソウルシンガーが故国アメリカに戻る際、空港への足に使うのがフルサイズのアウディと。ふうむ。いかにも。

投稿者 近野宏明