#111 読了日記022 『世界の日本人ジョーク集』

(2006/12/22)


 

 人間は、他人のことは目につくもの。「あの人は…だよね」「彼って…な人だから」。安易にレッテルを貼ってしまう。自分の貼り付けたレッテルに基づいて、その後のつき合い方も規定されがちではないでしょうか?「いやいや、自分は常に先入観も決めつけもしない。その都度公平な対人評価をしているよ」と言い切れる人はなかなか居ないはず、です。
 反面自分がどう評価されているか、如何なるレッテルを貼られているのか。これを客観することは至難の業。本書は、この国に生まれ育った人たちが、世界からどう見られているかがよーく伺える一冊です。

・早坂隆 『世界の日本人ジョーク集』 (中公新書ラクレ)

 著者は日本・日本人が登場するジョークを分類。「ハイテク国家」「お金持ちの国」「勤勉な人々」「日本人的アイデンティティ」…などの章立てをして分析している。変転の激しい時代ゆえに、経済力を表現したジョークなど少々ズレ始めている部分もあるが、概ね「そう見えるんだろうな」と得心せざるを得ない。(本書からの抜粋◆は紙幅の都合で一部短くしたうえで採録している)
 
061222_世界の日本人ジョーク集.jpgよく言われる日本の政治経済体制について。◆「マルクスとケインズがあの世で激しい議論。当然意見は合わないが、ただ一つ一致したことがある。それは【自分の理想を体現した国家はどこか】という問い。二人の答えはいずれも【日本】。」…ついこの間までは確かにそうだった、のかもしれない。そんな「マルクス=ケインズ体制」の下、世界が羨む富と物質的豊かさを獲得した日本。
 著者によれば、「失われた10年」も何とやら、「日本人=お金持ち」というイメージはまだまだ強いという。本書からの抜粋。◆「ロシア極東の困窮しきった自治共和国が、起死回生の名案を導き出した。計画は3段階。①ロシアからの分離独立を宣言。②日本に宣戦布告。③その日のうちに無条件降伏する」…なるほど。
 しかし表層の下に潜む本質はといえば。◆「日本国民の安全と財産を守る三大政党とは? 三位…民主党。二位…自由民主党。一位…共和党」。…嗚呼。これがどこの国のジョークかは記されていない。しかし少なからざる日本人が「ハッキリ指摘されるのは心地よくないが、首肯せざるを得ない」のではないか。私は初めてこの項を読んだとき、三位の民主党は日本の民主党を指していると思った。だが二度目に読んだとき、やっぱりアメリカ民主党だ、と思い直した。クリントン政権しかりカーター政権しかり、戦後の日米関係においては重大な差違は無かったのだから。現ブッシュ政権から民主党が政権を奪取した暁には、一位と三位は入れ替わるだけなのだろう。
 
 私が考えるすぐれたインタビュアーの条件の一つは、諧謔に包んだ辛辣な質問が出来ること。洗練されたジョークはそれと同じく、対象者の本質をどこまでもクリアに表現するのだ。あな恐ろしや。

投稿者 近野宏明