今を去ること数か月前。福岡在住の親友からメールが届きました。「ビリー・ジョエルに会いに行こう」と。久しぶりの日本公演、福岡公演は土曜なので遊びに来れば?という誘いでした。私の福岡訪問が実現するかは直前まで不透明ですが、半分「賭け」の心境でチケットを押さえたのです。そして先週末。日頃の行いの良さ?が実り、無事福岡へ。ドームの賑わいの一員になりました。
25曲、2時間あまり。至福のときでした。ああ…。ライブビデオやDVDの映像を見ると、よくステージを見つめて涙する観客がいますよね。私は今までそんなこと一度もありませんでした。しかし。今回は違った。前半は比較的旧い、しっとり系のナンバーが並んだのですが、「Honesty」「New York State of Mind」のイントロ。ピアノにぐっときてしまいました。もちろん「Just The Way You Are」のサックスソロにも。二十代で世界を聞き惚れさせた曲を生み出したその才能。34歳の私には、その旋律もさることながら、今さらその詞が沁みてきます。都会で暮らす者の内省を自分自身に重ねてなぞりながら。
それにしても、齢57のいまも十二分に声が出ることに驚き。さすがにキーを下げた曲もありましたが、鍵盤をたたく力強さ、伸びやかな声は健在です。うーん。この声、このメロディ、そしてこの詞。ビリー・ジョエルはすぐそこにいる。もう生で聴くことはできないかもしれない。危うく滂沱するところでありました。うるうる。最近は涙腺が緩んでしまっていけません。
後半はロックな曲が中心。いつもはヤンキースのキャップをかぶる「ニューヨークの詩人」。遠目には分かりませんでしたが、カメラが背後に回り込むと、そのマークは「ソフトバンクホークス」!まさに「The Entertainer」。…名古屋公演ではもちろんドラゴンズの帽子をかぶるのでしょうけど…。
前日がジョン・レノンの命日とあって、「Imagine」を唱ったビリー。続くこの夜のラストは「Piano Man」。歌い出しの詞は「土曜日、夜の9時」…福岡も間もなくそんな時刻。歌の中で描かれるライブハウスの光景が、いまここにあるような幸福な錯覚に見舞われました。ビールの香り、うっすらとしたタバコの煙、その向こうにたたずむピアノマン。…そして私の目の前にはいま、最高のピアノマンが。
その後。天神に戻って「もつ鍋」を堪能。ビリーも今頃どこかでもつ鍋食べてんのかな?と他愛もない会話を繰り広げて。そして、カラオケBOXでは「なりきりビリー」の歌声が夜の静寂に響き渡ったのでありました。
*ところで先頃リリースされた、トニー・ベネットのデュエットアルバム「Duets : American Classic」で、ビリーは「The Good Life」をトニーと共に唱っています。これがじつにすばらしい。心の奥をしっとりと暖めてくれるヴォーカルとアレンジです。
投稿者 近野宏明