世の中「マニア」と呼ばれる人は多いもの。「マニアック」という言葉は「重箱の隅」を象徴すると同時に、興味の対象たる「重箱」自体も一般の人が目を向けないもの、という感じがいたします。つまり圧倒的なスーパースターとなると、「マニア」の存在が何となくそぐわない気もするのです。でもやっぱりスーパースターにもマニアがいるわけで、この1冊は呆れるほどのマニアぶりが横溢しています。
・織田淳太郎 編著『20世紀完全版 長嶋茂雄大事典』(新潮OH!文庫)
最初にお断りしておきますが、じつは「読了」しておりません。あまりの項目数の多さ(およそ900項目)、一つ一つの説明書きの詳細さに、ちょっと圧されたのがその理由です。しかもその内容が「大事典」特有の無味乾燥なものとは対極にあります。国会答弁で大臣が読み上げる役人の用意した書面が普通の大事典だとすれば、本書は『踊る!さんま御殿』で性格俳優が生き生きと喋る舞台裏の思い出、みたいなものです。
そして、いわゆる「事典」で通例みられる項目の立てかたとは異なる項目が多いのです。この本の項目は、一見しただけでは意味不明なフレーズが相当数含まれています。説明書きを読めば納得できるフレーズ、しかしそれ単体では分からない。「大事典」の本義が如実に示されるのはこういう項目でしょう。
さらに。関連項目の多さも特筆ものです。一つの項目を読むと、だいたい末尾に関連項目が「→」で示されています。例えば、「セーフティバント」の項目の最後には<→『奇策』>とあります。で、「奇策」を見ると<→『セーフティバント』『星野仙一』『魔球』>の3つが。この調子で『星野仙一』→『驚異的な視聴率』→『国民的行事』→『自称長嶋茂雄の妻・母・恋人』…と関連項目を芋づる式に読み進むことになります。ゆえに、「あ」から順に読了するよりこっちの読みかたが勢いづきやすい。付録にも多くのページが割かれています。現役から監督時代を通じた全データ、詳細な年表、参考文献もふんだんに盛り込まれているので、データブックとしても使うスポーツ記者がいても不思議ではありません。
長嶋茂雄終身名誉監督、私は日本テレビの廊下やエレベーターで数回お目にかかっただけにすぎません。しかしその格好良さといったら、確かに他には絶対いらっしゃらないなと感じました。単に見た目がとか、着こなしとか身のこなしとか、そういう問題ではありません。スーパースターのオーラとはこういうものか…と。圧倒的な格好良さです。なるほど多くのファンが長嶋さんとともに笑い、ともに泣き、ともに日本の成長を歩んできた、という特別な気持ちを抱くのは当然だと思います。また近いうちに報道特番などにお出でくださることを願っております。
投稿者 近野宏明