・中野 翠 『今夜も落語で眠りたい』 (文春新書)
「睡眠は多すぎても少なくても、うつ病の傾向が高くなる」-先日の『リアルタイム』で小西キャスターがお伝えしました。7時間台の睡眠がうつと最も縁遠いそうです。そしてもう一つ。寝付きの悪い人のほうがうつと関連が強い、という傾向も。皆さんはどうやって快適な睡眠をとっているでしょうか。
本書は、ある日突然「古典落語の魅力に目ざめてしまった」というコラムニストの一冊。名人、巨匠、などさまざまに称される大名跡の芸・その魅力を、生き生きとした文章で語ったものだ。文楽、志ん生、円生、小さん…、それぞれの語り口、ちょっとしたアドリブ等々、聴きどころを余すところなく汲み取っている。
落語の初心者にも役立つのは2点。まず古典落語の代表的な噺はほぼ網羅し、ネタバレしない程度にあらすじとその妙味を紹介していること。もう一つは、収録されたCDもふんだんに紹介していること。これは、著者の落語の楽しみ方がCDによるところが大きいからである。東京に暮らしていても、寄席に通う機会はそうそう無いので、多くの読者にとっては実利であろう。
本のタイトルどおり、著者は「この二十年間、夜な夜な落語を聴いて来た。それが完全に就眠儀式となった」という。私はこう思う。誰しも「毎日が好日」とはいかないだろう。しかし綿々と語り継がれてきたおかしみや人の情けに溢れた噺を耳にするとき、日常の憂さや怒りも些事として心穏やかに扱うこともできるのではないか、と。なるほど就眠儀式としての落語というのも「あり」かな、と感じる。
冒頭の話に戻ると、私の平均的睡眠時間は7時間ちょっと。いざ「寝よう」と思うとそこから眠りに就くまでは5分かかるかどうか。つまり「うつ」とは最も遠い睡眠生活を送っています。イヤホンで音楽やラジオをうっすら掛けて布団に入ることも多いのですが、1曲目が終わらぬ内に眠ることもしばしば。音楽やラジオ番組を「落語のCD」に変えたらどうなるのか。至芸に耳と心を奪われて、眠るどころではなくなってしまうような気もします。
投稿者 近野宏明