田舎町に物々しい警備がありました。そこはイギリス・ブレア首相(当時)の地元セッジフィールドのトリムドン村。

ロンドンから4時間強。
まっすぐの道をひたすら走った先にある集会所前には英メディアが数社、中継車を構えています。
支持者に話を聞きながら、私も待ちました。観衆が声をあげる中、ブレア氏が到着。
・・・・正直、そこまでは、イギリス人に囲まれているのに「**県」にいるのでは?との錯覚を持つような、日本の政治の風景と変わらないものを感じていました。
しかし。
ブレア氏は演説を終えると観衆にしっかりとアピール、そして投げキスをして会場を去りました。
うう~む。
反発もある中での退任にもかかわらず、「最後の去り方」、その演出の「力」を肌で感じる場面でした。
さて。
6月27日、イギリスで10年ぶりに首相が変わりブラウン政権が誕生しました。


ブラウン首相は、フラッシュの中、緊張した面もちで首相官邸ダウニング街10番の邸宅に入りました。
じわじわと変化が起きています。
ひとつは司法制度。
そんな中、BARRISTER(法廷弁護士)協会の会長が、弁護士らが集う伝統あるパブで語ってくれました。


「ブレア政権では後半、現場との相談が欠けた感じがする」と。
→例えば;MINISTRY OF JUSTICE という全く新しい省庁が今年5月に誕生しています。
HOME OFFICE(内務省)から独立したものですが、「時期」について反対意見がありました。
政権移行前という中途半端な時期ゆえに業務が中途半端になったとの批判もあります。
だからこそ・・・・・「ブラウン政権には期待する」と言うのです。
緻密な相談があるからこそ、改革を歓迎できる・・との弁護士の声も聞かれました。

「司法制度改革で日本も思い切ったことをしているね」と声をかけられますが、イギリスも同様に、大きな変化があるのだと感じました。
なぜこれだけの改革を?と聞いてみると「変化が好きな時代だから」との一言。
「目に見える変化」をしたいものだと、説明してくれました。
ということで、三権分立のための改革、立法の仕方のバリエーションなど、改革案が練られています。
しかし、古き伝統も、改革されなければ、目に見えるとは言えません。
そうして出てきたのが「カツラ」です。

イギリスの裁判所の法廷ではカツラが被られています。私も実際に傍聴して見てみると、驚きました。


今では映画や絵画でしか見ないと思っていたら大間違い。
13世紀からある!という法律事務所が並ぶ古い通りを歩いていると、・・・・カツラを被った不思議な出で立ちの人たちが歩いています。


古くはフランスから輸入された文化ですが、イギリスらしく今も伝統を残しているのです。
「しかし。これに意味があるのか?」という疑問が当然ありました。
・・・・ということで、4年前から議論されてきたものの、イラク戦争で中断されていました。
それが、とうとう廃止の方向が固まった、との情報を聞きました。来年1月から廃止されるとのこと。
そこで本社に電話をし「桂です。カツラが無くなるって話をやろうと思っています」という、通じにくい連絡を入れました。
そして知り合いに電話をし、カツラを見せてもらいたいと御願いし、備えました。


快く応じてくれたのはローゼン弁護士。国際紛争などを手がけています。
綺麗な箱からカツラを取り出してくれました。
もう30年も使っているといいます。

美しい艶のあるカツラ・・・馬の毛だとか!

当時で350ポンドだといいます。(対円が1ポンド250円となっているため約9万円!)


氏の感想;
「暑くてね~あと長くつけていると頭が痛くなるんだよ」
なるほど!
そして。
「国際的な、ビジネスの法廷ではふざけた印象を与えるのも事実だ」と言います。
たしかに。
景気のよいロンドンではビジネスの話が多くなっているだろうから、「不都合だ」と感じるのは当然です。
私も被ってみました。
正直、暑かったし、チクチクしました。夏なら汗をかいて、かぶれると思いました。

カツラ屋を訪ねてみると・・・実に綺麗にカツラが並べられていました。法廷弁護士のもの、裁判官のもの、などそれぞれ特徴があります。高いものでは40万、50万のものもありました。

カツラ屋いわく「全て手仕事なのだから当然の値段だ」とのこと。
カツラを眺めていて、法廷弁護士に憧れる若い人にとっては、職業の象徴ともいえるものなのではないか、とも思いました。
そうして文化は残ってきたのかもしれません。カツラがファッションだとされた時代から200年余り。今も残しているのがイギリスらしい。
もっとも、ここで現実的意見も付随してくるのもイギリスらしいのです。
「残した方がいい」「カツラは武器なのだ」との意見が聞かれました。
いったい何だろう?・・・・と思う方、下の写真を見てみてください。↓
複雑なそして凶悪な事件が多くなるにつれ、カツラは大いに個人の特徴を隠すのです。
テロの裁判も多くなり、今では返ってこれが有効となっていたわけです。
確かに・・髪の毛だけで人の印象はだいぶ違います・・。


若い法廷弁護士にとっては若く見えない、という「年齢」さえ隠す効果もあるとか。
・・・・・・ということで、民事法廷でのみ廃止し、刑事法廷では残ることになりました。
だからこれからもロンドンの法律事務所街や、裁判所で見ることが出来ます。
しかしこの「カツラ」・・・・新政権になり、風通しをよくする「変化のしるし」では、と感じました。
これからどんな変化が見られるのか、楽しみです。








