初秋、英国情報機関の元スパイを取材した。
どこにでもいそうな風貌と、決して本心を明らかにしない、やりとりや表情。
それでも聞き出したい・・・名前を連呼し、訴えては引き・・長いこと、話し込んだ。
インタビューは、まさに「駆け引き」だった。


ようやく口にした言葉からは、厳しい世界が、かいま見られた。
決して派手ではない毎日だが、
・・・目の前のペンを手に「これでも殺せる」と語った時の目は泳いでいなかった。
イギリスに赴任してから、ここは「INTELLIGENCE=情報、知恵」の国だと感じる。
ロシアの元スパイの殺人事件では尚更、そう感じる。
・・これまでイギリスを支えているのは明らかに、こうしたインテリジェンスだと思う。
それは文化の一つとして発信されている。
真実をかわし、言葉にする文化。皮肉まじりの冗談。
あるいは結論の出ない議論に現れている時もある。
しかし意外な事実に支えられているとも思った。
日本でも今月、公開された新作007ボンド映画。
「ボンドらしくない」との前評判だった主演のダニエル・クレイグ氏は「人間らしいスパイ」を演じきった。
それは、これまで余り見られない、スパイになるまでの「人間くさい・泥臭い」、「失敗もする」姿だった。
これが受けて、映画は好調だ。


インタビューやプレミアの赤いカーペットで語った言葉は、謙虚で「人間臭い」言葉ばかりだった。
・・・実は、そこがポイントなんだと思った。
スパイ文化への理解はイギリスでは年々、高まっている。
様々な機関があるが、ほとんどが増員されている。
しかし、元スパイいわく「人間らしさ」「葛藤」が大事なのだという。
関わった人たちを亡くしたり、死に直面することがある。
だからこそ「人間らしく」あり、一緒に仕事をした人の逃げ道は守るのだという。

・・・・時には涙を見せ、時には笑い飛ばして煙に巻く。
だから武器は決して見せなくて済むのだと語っていた。
それを「自然」と国民は受け入れている。
「インテリジェンス」をイギリスは誇り、国力、文化として認識しているのだ。
特に、アメリカとの違いは歴然としてあると感じる。
当事者の訓練も違うというが・・。
去年、遭遇した同時多発テロ取材では、何よりもアメリカの反応との違いに驚いた。
「平静に毎日、行動する」ことを・・・政府も、そして市民も当然としている。
国力というものが何なのか?を感じる毎日。
規模も実情も違うが、「日本」へ向けた刺激を受けざるを得ない。








