ロシアの元スパイ・リトビネンコ氏殺害事件で、
一躍有名になってしまったロンドンの日本食レストラン(寿司バー)「 Itsu ~イツ」。
飲食店が放射性物質汚染の疑いありでは、さぞや意気消沈かと思いきや、
どうしてどうしてたくましい所を見せている。
このほど、休業中の外装をご覧の通りスパイ映画007でおなじみのデザインに模様替えし、
おまけに「国際スパイ事件で一躍世界中で有名になってしまった私たちのレストランをこれからも宜しく」などと、大きく宣伝している。通行人もビックリだ。

不幸なこの店舗、3週間前の日曜日、当局による検査の目隠しのつもりか
ガラス張りだった店構えが、一面真っ黒な板で覆い尽くされた。
その真ん中に小さく「Itsu」と遠慮がちに店名が書いてあったのだが、
翌朝行ってみると、異変が起きていた。
「Itsu」のロゴが一晩でふた回り位大きくなっている。
どうせテレビに映されるなら宣伝に使ってしまえということか?
転んでもタダでは起きない英国人気質が垣間見えて面白かった。
一定の効果があったか、その後明るいショッキングピンクの装いに変わり、今度はコレである。
マスメディアによって伝えられる映像、情報をいかに自分たちにとって有利なものに導いていくか、
これは企業に限らない命題だ。
先週、ブレア首相は一大ピンチを迎えた。
上院議員への推薦をめぐる労働党への不透明献金問題で、
ついに現職首相として初めてロンドン警視庁の事情聴取を受けたのだ。
当然、その日のテレビはブレーキングニュースとして大々的に伝えた。
だが、翌朝の主だった新聞各紙のフロントページは、別のネタで埋め尽くされていた。

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ちょうど同じ日、ダイアナさんの事故死をめぐる調査報告が発表されていたのだ。
思わずうなった。
「…これがスピン・ドクターの戦略か?!」
政界にあってマスコミ対策を専門にしている広報専門官を通称スピン・ドクターと呼ぶ。
イギリスでは過去にブレア政権のキャンベル氏が有名だった。
キャンベル氏の部下だった元BBC記者の著書
「THE SPIN DOCTOR’S DIARY~スピン・ドクターの日記」には
大手メディアの記者たちとのウラの交流ぶりが赤裸々につづられていて驚く。
彼らは様々な手練手管を用いてスピン(主に、情報操作で都合の悪いニュースから
大衆の目をそらす意味)を試み、メディアを操ろうとする。
例えば政府に都合の悪い発表を、同時テロだとか大きな事件の日に重ねることによって
マスコミの報道振りを小さく抑えるのは基本手法でもあった。
フィナンシャルタイムズ紙の報道によると、
今回の事情聴取の日取りは、ブレア首相の希望で決められたという。
ダイアナさんの報告書発表は以前から決まっていたから、疑念は残る。
英首相官邸「ダウニング10」は当然ながら意図的ではないと否定しているが、
野党は早速「スピンドクターが古い手を使った」と批判している。
スパイの国、情報の国、イギリスにいると、
何事につけて謀略めいて見えてくるのは気のせいだけではないのかも知れない。








