ローマ法王ベネディクト16世が初めてイスラム教圏を訪問するというので、
トルコのイスタンブールに行ってきました。

ベネディクト16世は9月にイスラム教と暴力を結びつける
神学講義を行ったとして、
イスラム世界から大きな反発を受けています。
その問題がまだ尾を引く中での今回のトルコ訪問。
トルコは国民の99%がイスラム教徒で、
かつて先代のヨハネパウロ2世を
銃で狙撃したのもトルコ人だったため、
今回も法王に何かの危害が加えられる可能性は
十分考えられたわけですが、
治安当局はそれを決して許しませんでした。
ブッシュ大統領の訪問時以上という
空前の警備体制が敷かれ、
法王が行く先々には交通規制やバリケード、
軍のヘリコプターが上空を飛び交い、
市民生活はマヒ状態です。
ここまでの厳戒態勢をとったのには
理由があります。
それは「EU加盟」。
いま法王の身に「何か」あれば、それは加盟が
絶望的になったことを意味するからです。
「ヨーロッパ側」のイスタンブールからボスポラス海峡を渡ると、そこはもう「アジア」。
そもそもトルコが「ヨーロッパ連合」に入ることがふさわしいのかどうか?
「ヨーロッパ人」の中に疑問の感情が存在することは否定できません。
トルコはその違和感を何とか解消して加盟を実現しようとしているのです。
EUからは政治・経済・人権など数々の分野で厳しい条件が突きつけられています。
それをこれから10年ほどかけて一つ一つクリアして行こうという最中に、
「ヨーロッパ」の精神的支柱の一つである法王に危害を加えることなど、
もってのほかというわけです。

事実イスタンブール市民はこうした背景を十分わきまえているとみえて、
インタビューすると「我々も法王を歓迎するので、
法王も我々(イスラム教)のことを理解して尊重してほしい。」といった
優等生的な答えが大半を占めます。
反対デモに参加して気勢を挙げていたのは、
あまり国際事情を理解していない
田舎の人たちがほとんどだったとも聞きました。
一方のベネディクト16世も随所で
イスラム世界に対する気遣いを見せながら、
このあたりの事情を踏まえて
「バチカンはトルコのEU加盟を支持する。」と発言。
結局ほとんど宗教とは関係ないこの発言が
最大のリップサービスとなりました。
というわけで「何か」が起きることもなく、
いや起きるはずもなく4日間の日程は終了。
法王は無事バチカンに戻ったのでした。








