ドキュメンタリー番組の編集のため先月、1年ぶりに東京に帰った。
ロンドンと東京の時差は9時間(夏は8時間)。東京の方が早く夜が明ける。
普通なら時差ボケに苦しむが、今回は逆。凄く役に立った。
というのも、例によって編集作業は連日明け方まで続くので、ベッドに入れるのは毎朝6時前後。イギリスでいうと夜9時に相当するから、早すぎる位の健康的な就寝時間となる。
正午の目覚ましで「起床午前3時」の計算になるので起きるのはつらかったが、
生活リズムを殆ど変えないで済んだ。
時差ボケ様サマである。
海外暮らしで本当に怖いのは外国ボケ、あるいは駐在員ギャップともいうべきものだ。
習慣の違う国に暮らしているとどうしても日本国内のセンスとズレが生じやすい。
英国在住30年のビジネスマンに教えてもらった「デワノカミ(ではの神)」なる言葉。
海外かぶれで何かにつけて「イギリスでは…」「アメリカでは…」と
偉そうにぶつ人をいましめるフレーズらしい。
確かに外国で「これは素晴らしい」と思っても、日本の社会、風土に通用するかどうかは別問題。
押し売りは禁物だ。
だが、今回製作したドキュメント「敗北外交」の主人公、経済産業省の現役官僚・前田充浩氏は、あえてイギリスを手放しで絶賛した。
「国際会議で、ただ自国の利益だけ主張するんじゃなく、
世界の公益をエレガントに論じている。
それがひいてはイギリスの国益につながっている。うまい」
「異端」を自認する前田氏は、
先輩たちが手がけた過去の国際交渉を敗北と断じ、
「資料を残さず反省を生かさない」日本流の組織構造を批判。
イギリス随一のシンクタンク
チャタムハウスに入門し、
タブーを破る研究「日本はなぜ負け続けるのか」を書き上げた。
その前代未聞の試みに注目し、NNNも丸1年にわたり動きを追った。
だが、イギリスを真似るだけでは足りないことも
彼は分かっていた。
「日本が経験した失敗を、新興国のために生かせないか」
前田氏が再び政府代表を務める
OECD(経済協力開発機構)輸出信用部会では今、
急激な経済成長を続ける中国と
国際市場の調和が焦点となっている。
アジアの先頭に立って来た日本が、いかに議論をリード出来るか、
外交力が問われている。
イギリスで多くを学んだと熱く語る前田氏は
「外国ボケ」を超越して、走り出したかに見える。








