「北朝鮮の“狂人”がついに核実験をやらかした!」
その晩、ロンドンの路上で受け取ったフリーペーパーには激しい見出しが躍っていた。
9日の北朝鮮による核実験実施の発表は、イギリスでも勿論、
テレビが明け方から速報するビッグニュースだ。
さて横断歩道を渡ったところで今度はパラソルを立てた女性から
別のフリーペーパーを渡される。


全面ブッシュ大統領の写真に
「GEORGE W BUSH 1947~TONIGHT 9PM!~
ジョージ・ウオーカー・ブッシュ、1947年生れ、今夜夜9時 没!」
の見出しがあしらわれている。
勿論こっちはインチキ、テレビ番組のコマーシャルである。
そう、今宵はこの1ヶ月しばしば新聞紙上を賑わしてきた英・民放チャンネル4の問題作
「DEATH OF A PRESIDENT~ある大統領の死」が放送されるのだ。
とはいっても有料のデジタルチャンネルMORE4での放映なので、
契約者以外は家で待ってても観られない。
以下は録画で確認した中身を軽く…。
物語は垂直のフカンでとらえた市街地や共同墓地のヘリショットから始まる。
サスペンス映画の味わいだ。
続いてシカゴ空港に到着したアメリカ大統領専用機エアフォースワン。
降り立つブッシュ大統領の実写映像。
市内に入った黒塗りの専用車には待ち受けた反戦デモの市民から
「ブッシュは来るな!」のプラカードが掲げられる。
時折、警察幹部や容疑者の親族ら(勿論俳優)のワンショットのインタビューが、
ニュース映像をそのまま使った大統領の演説などの合間にはさみこまれる。
本当のドキュメント番組?
と見まごう作りで視聴者をひきつけたところで問題のシーンだ。
会場を後にしようとしたブッシュ大統領が凶弾に倒れる。
駆け寄るセキュリティガード。はためくフラッシュ。
激しいカットバックで緊迫の映像が構成される。
現場となったビルの玄関を記録した監視カメラのビデオ映像。
そして容疑者の指紋・・・。
数々の証拠からアメリカ生まれのイスラム教徒らが浮上し、逮捕されるが、
真犯人は別のところにいた・・。
新聞紙上のレビューを眺めると
「これだけCONTROVERSIAL(議論の的になる)番組を作るなら、もっと掘り下げて欲しかった」
「テロリストたちに新たな手口を教える意味があったのか?」
と放送前と同様辛口の批評もみられたが、
ブッシュ氏本人にとっては悪い番組じゃなかった、とのミカタも。
テロとの戦いの矢面に立った悲劇の英雄ともとれるからか。
製作したチャンネル4はイギリスでも面白い位置づけのテレビ局で
古い資料によると、設立時
「ほかの3つのチャンネルでは満たされない関心にこたえること、
番組の形式と内容で新しい試みや実験を行うことが放送法で義務付けられた」
のだそうだ。(「世界の放送」1988年版)
確かにブレア政権の閣僚を茶化したドラマなど大胆な番組を良く見かける。
英国内での反響はまだ何ともいえない。
週末、特派員協会で会ったカナダ人記者も「観られなかったわ」と残念そうに話していた。
地上波のチャンネル4で今週、再放送されるから、
今度は多くの視聴者の目に触れることになり反響の度合いも見えてくるだろう。








