モスクワに赴任して1年半が過ぎた。
街では外国車が広い道路を埋め尽くし、大渋滞が続く。
車が売れ過ぎて生産が追いつかないらしい。
郊外には超大型スーパーが林立し、15年前のソビエト崩壊時の物不足がウソのように、
家族連れが何でも買える幸せを楽しんでいる。
ロシアは原油高騰を追い風にした空前の消費ブームに沸きたっている。
だが、豊かな消費生活に関心が集まる一方で、ロシアは着実に逆戻りをはじめている。
88年ゴルバチョフ政権にはじまった情報公開=グラスノスチは、
エリツイン政権に受け継がれ、2000年までは言論の自由が保障されていた。
だが、プーチン政権になってからはメディアの統制が強まっている。
もっとも影響力を持つテレビは、第1チャンネル(51%以上の株を国家が持つ)、
ロシアテレビ(国営)、NTV(51%の株を国営企業ガスプロムが持つ)とも、
漫才やドラマ、映画など娯楽番組ばかり放送している。
エリツィン時代に盛んだった討論番組や風刺番組はいつのまにか消えてしまった。
政権を批判するアネクドート(小話)もまったく語られていない。
エリツィン時代にあった自由と混乱は、ともに収束に向かい、モノいえぬ閉塞感が生まれた。
時代は繰り返すというが、エリツィンをフルシチョフにたとえ、
次のブレジネフの停滞をいまのプーチンに重ね合わせる人もいるようだ。
ソビエト時代は、たとえ物不足でも、社会はどうなるのか、人間同士の関係はどうなるのか、
少なくとも人々は将来のことを真剣に考えていた。
だが、いまは消費のことばかり・・・。
うすっぺらな世の中になったと感じているロシア人は少なくない。








