「食べたいものランキング」

(2006/09/26)


 

 はじめまして!バンコク支局カメラマン、星川です。わたくし、NNNの特派員で最年少、つまり一番の下っ端です。

 一番の若手カメラマンといえば、重い機材をどれだけ運べるかの体力が勝負!しかもバンコク支局のカバーエリアである、東南アジアからオセアニアや西アジア付近は、自然災害やテロなど、いわゆる「発生モノ」が多く、重い中継機材を持っていかに素早く現場に入って、現場から中継ができるかが勝負になります。

 タイのクーデターも、「発生モノ」でした。一刻も早く中継しようとしたものの、現場へと続く道路は装甲車で封鎖されています。銃を構えた見張りの兵士にお願いしてみると、「しゃあないなぁ、徒歩なら入ってもええよ」とのこと。そこで、重さが数十キロある中継機材を歩いて運ぶことになりました。

 1kmくらい先にある現場を目指してえっちらおっちら。上り坂に強い雨。私の人生を暗示するような道を、「1位トンカツ、2位寿司、3位焼肉・・・」と、「日本に帰ったら食べたいものランキング」を心の中で唱えながら、とぼとぼと歩きます。こんな時は、とにかく楽しいことを考えたいのです。
 
 降り続く雨と噴出す汗で、全身ズブ濡れ。機材の重さで腕の感覚が無くなって来た頃、現場に辿り着きました。戦車の前の絶好の中継場所を確保し、セットアップも完了!後はニュースの放送時間を待つばかり。

 ところが中継の20分前、銃を構えた兵士が、「ここをどけ!」と言い出しました。どうやら偉い人の気分が変わったらしく、200メートルほど下がれと言われたのです。中継の準備は完了しているし、そう簡単には動けません。「中継が終わるまで待ってよ~」とお願いしてみたものの、30歳の男(私)の笑顔が、銃を持った兵士の心を動かせる訳もなく、強制退去させられました。

 しかし、ここで中継ができなかったら、私がタイに居る意味が無い。運びましたよ、機材を全部。で、立ち上げましたよ、中継システム。噴出す汗に冷や汗も加わって、なんとも言えない体臭に包まれながら、20分後の中継は成功したのでした。

 この他にも、パキスタン大地震の時には機材を持って山をふたつ越えたりと、「発生モノ」の中継はとにかく体力勝負です。

 今後、海外からのバタバタした中継を見た時には、レンズの後ろでカメラマンが「食べたいものランキング」を唱えていると思って下さい。