アナン事務総長の後任に決まった韓国のパン・ギムン氏に直接会う機会があった。
北朝鮮の核実験を巡って国連安保理は10月14日、北朝鮮への経済制裁決議を採択。
パン氏はその前日、国連総会で次期事務総長に指名された。
同じ朝鮮半島に位置する分断国家が国際社会から、このタイミングで、
これほどまでに対照的な扱いを受けるのは運命のいたずらとしか表現のしようがなかった。
あれこれと複雑な思いを巡らせながら韓国の国連代表部の最上階へとエレベーターで向かった。
インタビューは「5分間」のみの約束だった。
世界が注目する超多忙な人物だから、5分間でもサシで会ってくれるのは
まさしく幸運としか言いようがない。
カメラと照明をスタンバイして控室で待っていると、
パン氏は何事もないかのように穏やかな笑顔で部屋に入ってきた。
スタッフひとりひとりに握手をする気の配りようだ。
威圧感もなく、気取ったところもまったくない。
そして求めるような目つきでわたしを見つめるのだ。
パン氏のあだ名は「つかみどころのないウナギ」。
5分間の持ち時間で、この人物からどうやったらニュースを引き出すことができるか?
質問を3つに絞った。
Q1;北朝鮮が制裁決議を無視し、再び核実験した場合、どう対応すべきか?
A;決議は北朝鮮にこれ以上否定的な行動をとらないよう求めています。
北朝鮮はこの決議を順守すべきでしょう。
Q2;中国は決議が定める貨物検査、特に臨検はしないといっているが?
A;すべての加盟国が決議の内容を遂行するように希望します。中国も含めてです。
(なんと当たり障りのない返答だろう・・・)
Q;日本に常任理事国入りする資格はあると思うか?
A;日本の気持ちは良く分かります。
事務総長として出来る限り幅広い“コンセンサス”が得られるよう努力していきたい・・
やはりウナギだった!本心がまったく見えない・・。
オブラートで包んだような言葉を並べられてインタビューはあっけなく終了した。
手応えはなかったが、うまくかわされ、なんとなく取り込まれてしまったような温かい、
奇妙な空気が流れている・・。
正直言って、パン氏にインタビューをするまで、わたしの心の角には一種の偏見があった。
昨年、中国や韓国で吹き荒れた反日行動。
小泉首相の靖国参拝や教科書問題などで日本はアジア外交で行き詰まりを見せていた。
国連でも常任理事国入りを目指す日本を中国・韓国は厳しく批判。
いわゆるコンセンサスグループを結成し、日本の常任理事国入りを阻止した。
そんな韓国出身の事務総長を心から歓迎できない自分があった。
そんなパン氏に対して、「このひとなら国連でもうまくやっていけるかも・・」と
不思議と感じられるようになっていた。
パン氏は調整能力に長けた実務派外交官として知られている。
アメリカが今回の事務総長選挙でパン氏を推したのも、
国連VSアメリカという対立軸を生んだアナン氏より、
こうしたパン氏の手法がやりやすいと踏んだからに違いない。
パン氏の事務総長就任後の最大の課題は北朝鮮問題だ。
さっそく北朝鮮を訪問しキムジョンイル
総書記と面会する意向も明らかにしている。
北朝鮮問題に韓国出身の国連事務総長がどのように向き合い、解決へと導こうとするのか?
時代の不思議な巡り合わせを肌で感じながら、
来年以降のパン氏の仕事に大いに期待したい。
ニューヨーク支局 狐野由久








